サルバム(sulvam)は、2021年春夏コレクションを発表した。今季のコレクションは、パリ・デジタルファッションウィーク期間中に、ムービー形式で発表された。
何が起こるかわからない世界の中で、どんなことが意味を持つのかを決めるのは自分自身だ。何が起こっても歩き続けていかなければいけないのだから、好きな服を着て歩いていこう。
サルバムが発するメッセージは前向きだ。ファッションを楽しむこと、自分自身でその行く先や価値基準を決めていくこと。ファッションの持つ力を信じ、個々の存在や意志を肯定していくことで、不安定さの中にあっても揺らがないブレの無さを見せた。
象徴的なのはブラックの使い方。最も“重い色”だと一般に認識されている黒を、あえて軽やかな表現でデザインに落とし込むことで、一義的ではない色の様々な意味合いを示唆した。立体感のあるパターンメイキングで仕立てたオーガンザのコートは、光を通す透け感とふわりと空気を含むフォルムが相まって、重さとは対極の、柔らかく軽快な雰囲気をまとっている。
また、白い糸と黒い糸を組み合わせて編み上げたオーバーサイズのニットは、編み目の織り成す凹凸がグラフィカル。身体のラインに沿って曲線を描くように、緩やかな落ち感を見せ、どこか有機的でフレキシブルな印象を与える。一方で、真っ白なニットは、段階的に幾重にも袖口を重ねたデザインによって分量感を演出。マットな質感と、温もりのある色味によって質量を感じさせる佇まいに仕上げている。
大胆な切り替えも散見されたディテールだ。ブラックやグレーといったベーシックカラーのテーラードジャケットやパンツ、スカートには、あえて明るい色彩の布地を切り替えたり重ねたりすることでアクセントを効かせた。
不均一なドレープを描くブラックのパンツの裾からは、さり気なくブルーの布地が顔を出す。グレーのストライプスカートにはライトピンクの布地を組み合わせ、斜めに切り込んだパターンや突如現れるギャザーの切り替えとともに、服に緩急をもたらしている。
また、テーラードアイテムはリバーシブル仕様となっており、裏返すと遊び心に溢れたパッチワークの面が登場する。例えばウールギャバジンのノーカラージャケットを裏返して着ると、襟のように見える切り替えを配した賑やかなデザインのジャケットに。斜めに施された切り替えは一見不規則に見えるが、仕立てや布地の流れと調和し絶妙なバランスを保っている。