2013年3月21日(木)、ヒロコ コシノ(HIROKO KOSHINO) が2013-14年秋冬コレクションを発表した。テーマは「花の記憶」。デザイナーの小篠弘子がイメージする様々な花の表情を、ひとつひとつの服に落とし込んだ。
ランウェイに大きく伸びた一輪の花。暗闇に包まれた会場に響き渡った神々しい音楽と共に、ショーは幕を開けた。スタートを飾ったのは、前面に大きな花が表現された、カラフルでゆったりとしたシルエットのワンピースだ。しかし時が過ぎるにつれ、その花は形を失い、色は鮮やかさを失ってゆく。表情豊かなそれらのワンピースを身にまとったモデルが一列に整列した様子は、観客に花の儚さを感じさせる。
ショーは続き、雰囲気は一転。音楽はリズミカルに変化し、シックなトーンで全身を統一したモデルが現れる。グレーからチャコールブラウン、ブラックへと徐々に色合いがダークさを増してゆくが、あくまでもその姿は丸みを帯びていて、女性的。たっぷりとしたボリュームのコートや、ドレープ感のあるジョッパーズパンツなど、曲線が美しいシックなそのスタイルはまるで、一輪の花が地面におとした影のようだ。
ベビーピンクのルックが会場に、ふんわりと、柔らかな空気を伝えたと思った次の瞬間、そのスタイルは鮮やかに、そしてポップに変化してゆく。花モチーフの抽象的なグラフィックや水玉、チェックなどが入り乱れた一見カオティックなデザインも、ストールやファー使いでゴージャスさをキープ。単なるラグジュアリーにとどまらない、ヒロコ コシノの余裕のある遊び心が垣間見えた。
ショーのラストを飾ったのは、花びらの質感が大胆に表された豪華なドレス。断片的なイメージがクローズアップされたそのデザインは、まさに人の記憶そのもの。夢のようでありながら、現実的でもある。そんな独特の世界が表現されたコレクションとなった。