ディオール オム(DIOR HOMME)が2013年6月29日、2014年サマーコレクションをフランス・パリで発表した。テーマは「THE SUN MUST HAVE HIS SHADE(太陽には陰がある)」。
「光があればその裏には闇がある」という哲学的な主題を、色の切り替えや演出で表現している。前ボタンを挟んで左側は太陽のワインレッド(オレンジというよりは赤く輝く夕日のイメージ)、右側は闇夜のブラックを連想させるジャケットは、今回のコレクションを象徴するコンセプチュアルなピース。そのワインレッドとブラックの中間に、ポイントとして、シルバーと光沢のあるワインレッドの別布を配した。
カラーはワインレッド、ブルー、グレー、ブラック。ほぼ同じルックを違う色で細かく表現する手法は、「人の心の揺れ動き(明と暗)」を色で表現しているように思えた。ランウェイの中央に設置されたミラーの迷路をモデルが歩く演出は、「人生には幾重もの壁が待ち受けているけれど、迷い悩みつつも力強く歩んでいこう」というクリエイティブ ディレクター クリス ヴァン アッシュのメッセージを感じた。
アイテムは、ディオール オムらしい装飾を極限まで廃したミニマルなものが中心。細いラペルのジャケットやチェスターコートは、ボタン、ポケットフラップ以外のディティールを排除。トラウザーは、ディオールを象徴する細みのスキニー、丈はワンクッションと、ややゆとりのあるシルエットの膝上丈に少し長めのショーツ。インナーのTシャツとジャケットのラペルの素材を統一したスタイリングは、ミニマルさと静謐感をより強調している。
その世界観の中で、シューズはデコラティブ。つま先の部分、鳩目(ひもを通す部分)、シューレースの先、ソールのサイドの“エア"をシルバーで飾り、キラキラと異彩をはなって輝いた。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)