ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)は、2021年 秋冬 アルタ サルトリア コレクションを“水の都”イタリア・ヴェネツィアのヴェネツィア国立造船所にて発表した。
かつて海軍艦隊を使ってはるか遠くの領土を征服し、通商路を守っていたヴェネツィアには、今もその成功の名残がある。ランウェイの舞台となったアルセナーレと呼ばれるヴェネツィア国立造船所は、巨大な港湾・軍事施設。12世紀以降、ヴェネツィアの造船業の中心地としてあり続け、各国への遠洋航海を終えた巨大船が戻る家のような場所でもあった。
ヴェネツィアにとって唯一無二の場所で見る美しい景色は、ドルチェ&ガッバーナの手法によって夢のように幻想的なものへ。一方で、航海の旅に出る男性たちの日常と、彼らのタフな人間像を彷彿とさせるコレクションを完成させた。
ゴージャスなガウンから、クラシカルなスーツ、カジュアルなタンクトップ、ナイトウェアのようなセットアップまで、航海の旅で欠かせないスタイルを確かめるようにアイテムは繰り返される。
そこに幻想を生み出す要因として、挙げられるのは“海”の表現。例えば、ランウェイ序盤に登場したクリスタルやスパンコールが煌めくルックは、太陽の光を反射する水面そのもの。さらに波打つ鏡面のランウェイが太陽を柔らかに反射することで、ジャケットからパンツまで、海中の揺らめきような光のグラデーションがもたらされている。
朝日を浴びる海、めいっぱいの太陽を浴びる海、夕焼け色に染まる海、夜の暗闇に紛れる海……。1日の中で表情を変える海の色も重要で、明朝の淡い紫色やピンク色、深みのあるミッドナイトブルーがその好例だ。
ヴェネツィアの歴史的建築物は、ダイナミックな表現を生んだ。天井画やフレスコ画を彷彿とさせるアートのエッセンスは、神秘的なムードを醸すガウンやシャツに。ヴェネツィアの街そのものの情緒的な風景もまた、鮮やかに落とし込まれている。
特に目を引いたのが、ランウェイのラストに登場したポンチョ型ガウン。青い空とヴェネツィアの運河、立ち並ぶ建物と待ちゆく人々……。鮮やかな1着は、きっと多くの人をバーチャルの旅へと誘うはずだ。