バルマン(BALMAIN)は、2022年春夏ウィメンズコレクションを発表した。
クリエイティブ・ディレクターのオリヴィエ・ルスタンが就任してから10周年を迎える今季のコレクション。歩んできた過去にオマージュを捧げつつ、“再生”をキーワードに自由で新たな時代へと目を向けている。
身体にバンドを巻き付けるようなウェアや、ストラップが長く垂れ下がるようなデザイン、身体にフィットさせて編み上げたニットドレスなどは、オリヴィエ・ルスタンが1年前に火傷を負って治療を受けた時の経験からインスピレーションを得ている。病院の部屋、包帯、ガーゼラップといった要素を、“治癒”というポジティブなイメージを称えることで美しさに昇華した。
リボンを幾重にも張り巡らせたミニドレスや、チェーンを組み込んで編み上げたドレスやミニスカート、ゴールドのしなやかなフリンジをあしらったドレスなどはいずれも身体性を強調するタイトなフィットに仕立てられており、センシュアルさと風格を携えた佇まいを演出する。一方、ガーゼを彷彿させるツイードジャケットやパンツにはダメージ加工を施し、ボリューミーなシルエットに仕立てることでパワフルなムードを漂わせた。
注目したいのは、バルマンと伝説的なメゾン・ド・レザージュのアトリエならではの職人技が光る、シャープなカッティングだ。ウエストのラインが優美な曲線を描くスカートや緩やかなカーブの襟ぐりが特徴的なオフショルダートップス、鋭利なパワーショルダーのボディスーツ、ウエストからヒップにかけてのサイドパーツをカットアウトしたデザインのパンツやドレス等は、ミニマルなデザインが、研ぎ澄まされた仕立ての精巧さと造形美を際立たせている。
また、しなやかな生地に細かくギャザーを寄せ、緩やかなドレープとの絶妙な均衡を表現したドレスや、ルーシングを効かせスカルプチャーのような立体感を生み出したトップス、積み上げた煉瓦のごとく整然とキルティングを施したオーバーサイズアウターなど、クラフトマンシップあふれるディテールが目を引いた。
ショー終盤のドレスルックでは、精緻を極めた装飾性がより顕著になる。華やかなビーズエンブロイダリーを全身にあしらったきらびやかなドレスや、多彩な編地を組み合わせることでダイナミックな模様を描き出すニットドレス、襟や腕のラインを縁取るようにしてビジューを施したシャイニーなフリンジドレスなどが展開された。
また、キルティングとフラワーモチーフのエンブロイダリーを組み合わせたミニドレス、裾にリュクスなフリルを配し、ニッティングとビーズ刺繍を施したゴールドのドレスなど、細やかな技術を結集させることで力強くダイナミックな存在感を生み出しているのが印象的。これらのドレスルックの数々は、オリヴィエ・ルスタンがこれまでに蓄積してきた鮮やかなクリエイティビティと、それを踏まえた上で新たな時代を切り拓こうとしていくエネルギッシュな姿勢を象徴しているかのようだ。