映画『オートクチュール』が、2022年3月25日(金)に新宿ピカデリー、HTC 有楽町、Bunkamura ル・シネマ他全国にて公開される。
映画『オートクチュール』は、フランスの一流メゾン・ディオール(DIOR)のアトリエを舞台に、“出会うことのなかった二人”の人生が交差する姿を描いた感動ストーリーだ。時に反発し合いながら、時に母娘のように、そして親友のように、厳しいオートクチュールの世界で彼女たちが<本当に大切なもの>を手に入れるまでの姿を、美しいドレスの数々と共に描き出す。
物語の主人公は、引退を目前に控えたアトリエ責任者であるエステル。完璧主義である彼女はアトリエの中でも近寄りがたい存在だが、プライベートではバラに話しかけるしか楽しみがない孤独な一面を持っている。
そんな彼女が出会ったのは、地下鉄で遭遇した“ひったくり”の犯人・ジャド。その滑らかに動く指先にドレスを縫い上げる才能を直感したエステルは、なんとジャドを見習いとしてアトリエに迎え入れることにする。
主人公のエステルは、ディオールのオートクチュール部門のアトリエ責任者として、オートクチュールの世界で活躍してきた引退間際の孤高のお針子だ。ジャドにハンドバッグを盗まれるが、警察に突き出す代わりに、エステルは彼女の世話をすることを決心。エステルの唯一の財産である、ドレスを縫い上げる卓越した技術、クリエイションの真髄を受け継ぐ相手になり得ると直感する。
そんな主人公・エステルを演じるのは、フランスを代表する名女優ナタリー・バイ。仕事とプライベートで二面性を持つ複雑な彼女の内面を、見事に演じ分けた。
ジャドは移民二世の少女。手先が器用。新しい仕事と生活に不器用にも挑戦する。エステルとは、反発し合いながらも、母娘、親友のように過ごす。ジャドはエステルより“指先から生み出される美”を授がれていく…。
演じるリナ・クードリは、ウェス・アンダーソン監督作品『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の公開を控えている。映画界で大ベテランのバイを相手に、ののしり合う圧巻の演技力に注目だ。
主人公・エステルを演じるナタリー・バイにインタビューを実施。長年俳優として活躍してきたナタリーが、オートクチュールの世界を愛する孤高のお針子、エステルの魅力を自身の俳優業と重ねて語る。
撮影前にはディオールのアトリエを実際に見学されたそうですね。その中でどのようなことを感じられましたか?
ディオールのアトリエは、とても独特な雰囲気で、常に濃密な時間が流れていました。私は、アトリエで職人をはじめスタッフの仕事の風景を見て、空間を共有させてもらうだけでしたが、それだけで仕事への愛の強さをひしひしと感じました。
お針子は、1日中、型紙をのせたテーブルと向き合って作業し続けなければなりませんし、とてもキツイ仕事です。でも、彼らの手から生まれるドレスは息をのむほど美しく、限られた人しか着られない高価なもの。夢のようなファッションです。まさに“夢”をつくる仕事だと、自身がお針子であることに誇りを持っていました。
だからこそ、お針子たちの仕事への愛と、愛を注ぐ濃密な時間をエステルとして表現しなければと思いました。
エステルは仕事への強い愛を持った人物です。
そうです。人生=仕事と言っても過言ではないほどエステルは仕事を愛している。仕事にかける愛情は、ディオールのアトリエで見たお針子たちに感じたことでしたし、そんなエステルの人柄に私はとても惹かれました。
彼女は、仕事一筋で一見すると厳しい女性のようだけど、か弱い一面もあり、誰もが共感できるような女性です。弱さを隠しながら、仕事に情熱を傾けているところも、現代女性の等身大を表現しているような気がしました。
ナタリーさんもエステルと同じように長年ひとつの仕事=役者に向き合ってきました。エステルと自分の共通点だと感じた部分を教えてください。
エステルほどではありませんが、私も俳優という仕事を心から愛しています。世界中には、本心ではやりたくないと思うようなことであっても、生活の為にやむを得ず仕事を選んでいる人は少なくないはず。そんな中で、自分の仕事が大好きでいられる私は幸せです。俳優という仕事に誇りを持っています。
俳優のどんなところに魅力を感じていますか。
一度きりの人生で、複数の人生を生きられる。それが俳優の醍醐味ですね。
今回は世界的メゾンブランドのアトリエを統括するチーフでしたが、次回作では全く違う人生を歩むことができる。いろんな役柄を演じられるのは、本当に幸運なことだと思います。さらに言えば、役の人生を映画の中で全うすれば、私自身の人生の糧にもなっていくのです。
魅力的な反面、いろんな人生を歩むというのはとても複雑で難しいことだと思います。これまで心掛けてきたことはありますか?
いつも正しい理由があってオファーを受ける。そうあろうと心掛けてきました。それが出来たのは、デビュー作でフランソワ・トリュフォー監督と出会い、俳優としてのスタート地点で「クオリティの高い仕事はどういうものか?」、その“味”を教えていただいたからだと思います。
クオリティの高い演技を続けるには何が必要でしょうか?
クオリティの高い演技をするには、作品に対して真摯な思いがなければなりません。その上で重要なのが“選択”です。
“選択”とは?
これまで「この監督と一緒に作品を作りたい」、「この人物を演じてみたい」、「このテーマでやってみたい」といった、真摯な理由がある作品を“選択”してきました。例えば、ギャランティーがいいからといった不純な理由ではなくてね。
いざ作品に参加するとなった後も“選択”は欠かせません。シナリオを聞いてみて、自分自身が「これは違う」と感じれば、気持ちを抑えず、すぐに監督に伝えるようにしています。
相談を重ねた後に完成した自らが納得するシナリオだからこそ、演じるにあたっては何の難しさも感じませんし、役になりきることが楽しくなる。自分がやりたいと思える役に向き合えば、おのずといい演技ができるはずです。映画の中だけとはいえ“自分が生きる人生”なのだから、そうでなければならないとも思うのです。