ヴァレンティノ(VALENTINO)2014年春夏コレクション。デザイナーのマリア・グラツィア・キウリと ピエールパオロ・ピッチョーリは、新たなスタイルとしてオペラとストリートの融合を掲げた。
舞台衣装のエッセンスを、リアルクローズに落とし込む。オペラとストリートの融合と聞けば、現在のモード界の流れからして、この方向性が真っ先に目に浮ぶ。しかし今季のヴァレンティノは、その予想の枠を軽々と飛び越えて行った。ショーで表現されたのは、デコラティブでゴージャスな空気感の中に、エッジィさを重ねたスタイル。オペラの華やかな美しさと、ストリートの鋭さの融合だ。このアプローチにより、リアルクローズという概念からは距離を取る一方で、伝統にモダンな輝きを与えていった。
想像上の民族に着想を得たというエスニック調の柄は、様々なテイストで展開。あらゆる場所に用いられ、ポップであったり、華やかであったり、そして時には重厚感を醸し出していたり。今季、コレクションの装飾性を支える中心となったのは、このエスニックの要素だと言いきって良いのかも知れない。ふんだんに施された刺繍も、バッグやコートのフリンジも、文化の香りを漂わせる大きな役割を果たしている。
そしてその装飾性を、透け感や、ドロップショルダーにマイクロミニのスカート丈、ゆるやかなシルエットで現代的にアップデート。軽やかなネットやオーガンジーは、部分的に使用され、スタイルから鋭い表情を引き出した。華美かつ繊細でいて、破壊的。これらの複雑に絡み合った要素こそが、新たな美を生み出す。