エルメス(HERMÈS) 2022年秋冬コレクションが発表された。前シーズンに続き、アーティスティック・ディレクター ヴェロニク・ニシャニアンは、フランス人舞台演出家のシリル・テストとコラボレーションを継続。タペストリーを壁面のスクリーンに映し出したユニークな演出のもと、秋冬に捧げるエルメスの世界観を描き出した。
秋冬に欠かせないアウター群を、豊富なバリエーションで揃える今シーズン。メゾンの伝統が息づく上質なレザージャケットや上品なウールジャケットはもちろん、硬質で光沢のあるテクニカル素材のジャケットや、ふわふわの大きなファー襟を持つコートといったユニークなアイテムも、負けず劣らずその存在感をランウェイの上で解き放っている。
アウターを重ねたレイヤードスタイルでは、柔らかなレザー製のダウンウェアと、硬質なテクニカル素材のジレをコンビネーション。グレー系の同系色でまとめた統一感のあるスタイルながら、異素材が生み出すハイブリッドな表情が、洗練された都会の空気を纏っている。ボトムスは緩やかなシルエットでありながら、ルーズさを感じさせない絶妙なバランスも心地良い。
ジップが斜めに横切るディテールも今季ならでは。ジップを取り囲むアクセントラインを、レザーで表現したことで、単なるアクティブな要素としてだけでなく、高いクラフトマンシップが宿るメゾンらしいエレガンスを感じさせてくれる。鮮烈なオレンジが目を惹くルックでは、レザーディテールのブラックで全体をまとめただけでなく、やや小ぶりなツバを持つハットや端正なレザーシューズなど、計算された上品なアクセサリー使いも美しい。
上品なジャケットスタイルには、首元にポイントをおいたコーディネートを提案。ネクタイ×シャツに、ピークドラペルのダブルジャケットを合わせたルックでは、ぐるりと首元にまいたスカーフが軽快なアクセントに。
またスカーフと一繋ぎとなったようなシャツも登場し、首元からはゆったりと豊かなドレープが流れる。シックなブラックのジャケットから、美しいペールピンクが覗くその様は、秋冬のパリの街角でひっそりと蕾を咲かせる、美しい花の姿を見ているかのようだ。
©Filippo Fior