sacai(サカイ)の2022-23年秋冬コレクションは、デザイナーの阿部千登勢が探求を続けた末にたどり着いたシルエットが採用されている。
歴史上でクチュリエたちが築いてきたバスト・ウエスト・ヒップのコントラストが織りなす美しいシルエットを軸にしながら、古典的なマスキュリンとフェミニンの着こなしに新たな関係性をもたらしている。
マスキュリンの再解釈は、紛れもなくsacaiの十八番であるハイブリッドにも共通している。フィッシャーマンジャケットやアビエータージャケットはブラのようなインナーを適応し、トレンチコートはビスチェ風あるいはベアトップのようなレイヤードによって、エレガンスなニュンアスを加えている。
クラシックなスーツの再解釈は多彩で、ウィットに富んでいる。例えばピンストライプの生地は、ナイトドレスを彷彿とさせるキャミソールと大胆なスリット入りスカートのコンビネーション。ボックスシルエットのジャケットとスラックスのスーツは、胸元にブラのようなディテールだけでなく、ベルトで絞ったウエストによってペプラム風のラインによってマスキュリンとフェミニンが融合する新たな関係性を示唆している。
先述したシャツ生地の使い方も然り、本来私達が見慣れているアイテムへ新たな価値が付加された意外性も今季は突出している。レオパード柄のトラックスーツは、パンツに軽やかかつシアーなテクスチャーが採用され、解体されることでロングドレスのエレガンスを纏う。オーバーサイズのローゲージニットは大胆なシルエットが特徴だが、その長所を生かしながらボリュームに緩急をつけ、さらに肌が透けるインナーと組み合わせることで、カクテルドレスのような女性らしさを香らせている。