アキラナカ(AKIRANAKA)は、2022-23年秋冬コレクションを発表した。
2022年プレフォールコレクションに続いて、今季も五木田智央のアートワークからインスパイア。デザイナー・ナカアキラが着目したのは、五木田智央の表現に見て取れる、シュールなアプローチや、意表を突くような表現手法だ。既存の様式や技法から距離をとった五木田智央の独創性には、シュルレアリスムを彷彿させる要素や、思わず目を引くようなフックが内在している。
同時に、ナカアキラはシュルレアリスムでよく用いられる手法の1つである「デペイズマン」にも焦点を当てている。「デペイズマン」は、従来の文脈や概念からあえて逸脱させた形で、異質な空間の中に“そこにあるはずのない”“そうであるはずがない”物体を配置することで、見る者に衝撃をもたらす。
五木田智央のアートワークや「デペイズマン」の概念に触れ、「好奇心を掻き立てる“歪さ”や異和はやがて受容され、新たな価値観として定着するのではないか」と考えたデザイナーのナカアキラは、シュールな歪さを衣服のデザインにて実践。異和を生み出すことで、新たな美の追求、“美”の概念の変容を試みている。
例えば、コートの前立てや袖口、ブラウスに並ぶボタンは、途中まで一定のリズムで並んでいるにも関わらず、いきなりある地点から凝縮される。袖口とグローブが一体化したジャケットは、手をグローブに入れずに着ると手の影が立体化しついて回っているかのような遊びのあるデザインに仕上げた。
柔らかなウール地のワンピースやジャンプスーツには、ボタニカル柄を描いた上からあえて塗りつぶしたグラフィックを転写。余白と陰影の入り混じる抽象的な模様が余韻を残していく。また、あえて服地に大きな穴を開け、その周りをチェーンで縁取ったブラウスや、スパンコールを編み込んだニット、チェーンをランダムに連ねるようにしてあしらったニットなど、余白をあえて装飾するディテールも散見された。
加えて、フリンジが所々から飛び出しているかのように見えるニットやドレス、片側の袖にのみ、突飛な形でファーをあしらったニットなど、動きを持たせたデザインも目を引いた。大胆なノットモチーフがフロントを横断するワンピースやスカートも、“結ぶ”という動作と、それによる変形によって、衣服に動きがもたらされている。