商品の製造はどこで行われているのですか?
フルラの商品は、イタリアの文化で培いながら創り上げていくことで、魂を持った製品になると考えます。本社はボローニャですが、製造はトスカーナで行っています。というのは、トスカーナはイタリアの中でも一番、タンナーが集中している地区で、革の加工技術が最も進んでいますし、皮革のクラフトマンシップが一番発達しているのが、トスカーナ州です。
他ブランドでは、職人不足や価格上昇などの傾向がある中、なぜフルラは高いクオリティの製品を消費者にとって納得のいく価格で提供できるのでしょうか。
それには非常に努力をしていまして、まず品質とクオリティバランスのよい素材を選択して使うことが第一。製造過程において、もちろん革新的なものを提供したいのだけど、実質的に作業時間と手間賃を抑えること。それがかえって、フルラの製品の基本的な構造を大切にした、ごてごてしていないシンプルなフォルムを作ることにつながっています。それが革新的なエッセンスでもあるのです。
素材の良さも引き立ちますね。
そうですね、素材や仕上げの美しさも際立っていると思います。例えば商品によっては革のツバが見えるものがありますが、これだけ滑らかにするには、仕上げのニスを何度も重ねていますが、その仕上げの繊細さ、良さも分かっていただけると思います。こうした細部にわたる美しさもフォルムとして芸術の作品と呼べるのではと思います。
伝統に裏付けられた技術なのですね。それでは、どのように革新性を作り上げているのでしょうか。
やっぱり私たちは同じことだけを繰り返す退ブランドになりたくないという想いと、また14年前にFURLA 芸術賞を創設しましたが、コンテンポラリーアートを支援する活動をしていますが、そういったコンテンポラリーアートとの関係が私たちに刺激を与え、新しいビジョンや新しいデザインや表現技術などを生み出しています。
今季もイメージビデオを作っていますが、フルラが初めてアートビデオを作ったのは2002年で10年以上も前になります。その当時はそれほどまだファッションブランドが自分たちのコンセプトを、映像を使って表現するということはやっていませんでしたから、先駆けだったと思います。
そうったコンテンポラリーアーティストとの仕事によって、他のブランドより先を行っているかもしれません。ビデオというのは、3、4分でブランドのコンセプトを伝えるのに効率がいいですよね。紙とはまた違った形で表現できる有効なツールです。
コンテンポラリーアートというのは単に絵画に限られたものではなく、絵から写真、映像、パフォーマンスやインスタレーションのようなものにつながってきます。一番最近のFURLA 芸術賞の受賞作品は、視覚と共に聴覚も使った複合的な感覚を使って楽しむ作品といったもので、そういった非常に面白い取り組みを支援しています。先日、東京都現代美術館に行ってきたのですが、展示された作品の中で、一番気に入ったのは透明で結晶、チャイコフスキーの音楽が流れていた「吉岡徳仁-クリスタライズ」です。