ここのところの3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)は西海岸づいている。前回の70’sサーフに続き、2014-15年秋冬コレクションで選択した主題は「ウエスタン」。アメリカの西部開拓時代の精神とウエスタンを象徴するディティールをコレクションの中に組み込んでいる。
ファーストルックは、ウエスタンシャツのディティールを部分的に取り入れたホワイトのレザーシャツを羽織ったモノトーンのアーバン・カウボーイ。ブルーのセットアップスーツは、レザーヨークを模してネイビーで色を切り替えている。デニムのウエスタンシャツは、下に同素材のロング丈のプルオーバーシャツを合わせることで、バタ臭さをファブリーズ。木調のプリントTシャツは、首の部分の切り替えがウエスタンシャツのフラップポケットの形になっている。ぱっと見ではウエスタンには見えないこのあたりのさじ加減は本当に上手い。
後半は、現代のカウボーイとして、ウエスタンの中にバイカーの要素が入ってくる。バイクレース用のレザーパンツのディティールを取り入れたデニムパンツ、ウエスタン調の刺繍が同色で施されたライダースジャケットはその一例。ウエスタン以外では、顕微鏡で覗いたような大きなウインドペンのジャケットとパンツ、後ろ側のみ着丈が長いモッズコート風のケープ、ネップ調のショート丈のブルゾンなどがある。カラーパレットは、ブラック&ホワイト、ネイビー、ブルー、ブラウン、キャメル、オレンジ、ワインレッドで、色を多く使っているにもかかわらず不思議とまとまり感がある。
ウエスタンというコスプレになりがちな危険なテーマをさらりと見せる力量は流石の一言。「編集」と「引き算」という現代デザイナーに必要とされる能力の高さを改めて証明した。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)