シャネル(CHANEL) 2023年春夏コレクションが、フランス・パリで発表された。
着想源となったのは、アラン レネ監督の代表作「去年マリエンバートで」(1961)。当時のフィルムを切り取り、コラージュしたようなファーストルックを筆頭に、今季のランウェイは白黒映画の世界に迷い込んだかのようなモノクロのパレットが主流となる。
従来よりもクラシカルなカラーが次々にランウェイへと顔を出すが、デザインそのものはレトロというよりもむしろフレッシュ。かつてガブリエル・シャネルが、女性の動きや表現の自由を探求したように、モダニティと軽やかさを衣服の上で表現した魅惑的なコレクションが幕を開ける。
まずシャネルを代表するツイードスタイルは、足を大胆にみせる若々しいルックが印象的。ミニ丈のフレアシルエットに仕上げたツイードドレスは、太めのベルトでキュッとウエストマーク。また定番のツイードジャケットスタイルには、刺繍入りのマイクロ丈のショートパンツやレースパンツなど、意外性のあるピースを組み合わせている。
カラーこそ、やや単調にみえるものの、その分装飾にはデコラティブな要素をプラス。CCマークとスパンコールが並ぶスーツスタイル、フリルをたっぷりあしらったホルターネックのミニドレス、フェザーがひらめくシアードレス、リボンを一面に飾ったブラックドレス…といったピースが、ランウェイに洗練された華やぎをもたらしている。またちょっぴりレトロなポルカドット柄も今季らしいモチーフのひとつ。ドット柄と交わるようにパールのボタンをあしらったジャケットは、思わずときめかずにはいられない。
またランウェイの上には、モノクロのパレットに映えるフレッシュなカラーも時折差し込まれている。淡いイエローやミントのチェック柄のスーツ、往年の女優を連想させるゴールドのロングドレス。そして冒頭のフィルムプリントを連想させるコラージュは、女性らしくやわらかなピンクツイードで再解釈された。
ショーの終盤は、黒のドレスがランウェイを席巻。チュールやレースといったシアー素材を多用したブラックドレスは、センシュアルな表情を持ちながら、女性の身体も解放するように、軽やかなムードも纏っていた。