天井に浮かぶ雲、マシュマロのような椅子、ランウェイを照らす青白い光。 女優ジェシカ・ラングによる”Happy Days Are Here Again”というモノローグが響き渡る中行われたマーク ジェイコブス(MARC JACOBS)の2014-15年秋冬コレクションは、会場のシュールな雰囲気とは対照的に、ソフトでフレッシュなエネルギーにあふれている。
そのひとつの要因となっているのが、柔らかな濁りのある、美しいカラーリング。それもそのはず、今季デザイナーのマークがインスピレーションを受けたのは、メイクアップのカラーパレット。独特のマットなカラーに、ラメのようなきらびやかなスパンコール、優しいグラデーション。普段見慣れたはずの中間色は、服に落とし込むだけで思わぬ魔力を持つということを証明してみせた。
ショーの序盤で目立ったのは、ワントーンのカラーでまとめたスタイル。細身のスラックスに無地のトップス、ロングドレスにタイツ。引き込まれるような色合いを、シンプルに押し出したスタイルは、大きく空いた胸元やフューチャリスティックなブーツにより、さらなる変化が加えられている。
アウターはビッグボリューム×ショート丈のバランスで。ラグジュアリーなファー使いの一方で、アームはいびつさを感じさせるほどに太い。息をのむような迫力ある一着だ。
終盤に差し掛かると、半透明のオーガンザが少しずつ顔をのぞかせ始め、体中を包み込む軽やかなドレスへと変化した。その佇まいはまさに、徐々に色を重ねていくメイクアップそのもの。不規則なグラデーションは、会場の不気味な空気に調和しつつ、儚く美しい残像をのこした。