バルムング(BALMUNG)の2023年秋冬コレクションが発表された。
未来におけるファッションでは、人間だけでなく様々な生物が直面しているエコロジー的課題——地球環境や技術発展の影響など——によって変化する人間の身体に合わせて、その役割や内実が変化する。たとえば、近年では「Chat GPT」といったAI技術の発展により、AI自身が行うある事象の画像化および視覚化が格段と進歩した。その影響は現代にもたらされた「新たな風景」であり、この先の未来においても「新しい風景」は加速していく。
今シーズンでは、それらの「新しい風景」が展開される未来を想像し、ファッションや人間像に想いを馳せたコレクションを展開する。
今季において鍵を握るのは、「人口自然としてのライフグリーン」だ。同じく鍵を握るアイテムであるスウェットトレーナーを明るいグリーンカラーで彩り、コレクションに軽やかさをプラスする。この印象的なカラーは、バルムングが想定する未来を開拓し、人間社会を新たに創造する未来を空想するための象徴的なカラーに位置付けられている。
また、前シーズンに引き続き、ハッとするほど鮮やかなオレンジ色“インターナショナルオレンジ”も登場。ハーフパンツやグローブに採用し、ライフグリーンとのコントラストを生み出した。
スウェットはユートピア的アイテムとして提案されている。そこに施された曲線は人工的で、アイテムごとの配色などの違いから異なる表情を見せる。トレーナーとパンツを合わせることで、その流れは繋がっているようにも思える。なお、人工的な曲線を配したスウェットアイテムは、トレーナーやフーディー、パンツやショートパンツで展開され、今季の特徴的なアイテムとなっている。
また、スウェットはあらゆる境界線を超越するアイテムでもあると位置付けた今シーズン。大胆なまでにビッグシルエットのスウェットトレーナーは、国と国の境界線である空港や、領土の及ばない宇宙空間といった中間的な領域から着想を得て、アイデンティティや宗教的制約を問わずに誰でも着用できる服をとの思いから生まれている。
さらには、現代社会では何を身に着けているかによって、個人を示すアイデンティティを決めつけられたり、あるいは自身で選ぶことができるという選択すらを有耶無耶にする役割も備えているのである。