キコ コスタディノフ(Kiko Kostadinov)が2024年春夏メンズコレクションを発表。
舞台としての芸術、舞台としての人生。キコ コスタディノフの2024年春夏コレクションは、映画の登場人物が現実世界に呼びかけるかのごとく、“ファッションのメタフィクション的な側面”を抽出する。男性の身体が纏う衣服を物語の構造として捉えた上で、そこからの脱却を志向するかのような、“洋服についての洋服”が展開された。
中でも、洋服の厳格な構造に一石を投じ、“乱れ”を一つの形式として提言するようなディテールが印象的。ピエル・パオロ・パゾリーニによる短編映画『La Ricotta(1962年、イタリア)』からインスピレーションを得た挑発的なムードが色濃く感じられる。
例えばジャンプスーツは、デコルテを強調するノーカラースタイルと、身体に沿うような縫製によって上半身のラインを描き出す。そこに下半身のゆとりある生地使いが合わせられることにより、かえって着衣と非着衣の官能的な緊張感が浮かび上がってくる。
さらに、機能的なタブやエポーレットを備えた1980年代テイストのパワーショルダージャケットには、ブルガリアの星や花の刺繍、フリルとギャザーを配した襟、飾りボタンなどを配して。確かな実用性の中に、忘れてはいけない遊び心や軽やかさを同居させている。
スタイリングに残された余白は、着用者に解釈の喜びを与えてくれる。不規則にパネルやマルチボタンが並ぶアウターは、着るときの気分や好み、インナーに合わせて留位置を自由に調整可能。その他にも、ダブルカラーのテーラードジャケットやニットベストなど、レイヤードスタイルのアクセントとなるようなアイテムが提案された。
ブラックチュニックにあしらわれたフラットプリーツは、夜の帳をその身におろすかのよう。コレクションは闇のおぼろげなカラートーンを主軸としながら、コバルトブルーやローズ、ライラック、カドミウムイエローといった快活な色彩が差し込まれた。
足元では、ウェーブソールの「トンキンブーツ」がマルチユースなサンダルとして復活し、シボ加工レザーの新作フラットスリッポンが加わった。