セヴシグ(SEVESKIG)の2024年春夏コレクションが、東京・台東区の東京キネマ俱楽部にて、2023年8月30日(水)にアンディサイデッド((un)decided)と合同で発表された。
「もし人と人、国と国の間に壁がなければ」。この思いが込められた“IF WE BREAK DOWN THE WALL”という言葉をタイトルとして掲げた今季のセヴシグ。デザイナーのノリは、人々との間に壁がなくなれば、争いや分断もなくなりその先に光も見えてくるのではないかと考え、自身が創作の着想源としてきた予言や神話、都市伝説といった土着信仰からスラヴ民族の伝承や神話に辿り着き、コレクションに落とし込んだ。
まず注目したいのは、スラヴの伝統的な民族衣装に見られるディテールと、ノリのオリジンであるアメカジを結びつけたルック。ギャザーやシャーリングをたっぷりと配したワンピースや、華やかな花の刺繍やクロスステッチを施したトップスやパンツがその好例だ。
争いによって傷ついた人々の心象風景を表すように、レーザーカットでボロボロに穴のあけられたデニムも登場。空いた穴を塞ぎ、癒しを与えるかのように散りばめられた花の刺繍もポイントだ。そのほか、表面の顔料が薬品によってはがされたレザーやクラシックレザーのライダースジャケットからも、傷ついた内心を感じる取ることができる。一方で、ウェアの随所に見られるキラキラとした素材は、障壁を取り除いた先に見える希望の光を象徴している。
AIが生み出す現実と虚構の境界線を探求することもセヴシグのコレクションを語るうえで欠かせない。今回は、MidjourneyやChatGPTを用いて、人の想像の斜め上を行く“発想”をウェアに取り入れた。たとえば、AIの誤訳によって生まれた「トラの頭を持った神」は、最先端のプリント技術を用いた服作りを行うトルク(TOLQ)とのコラボレーションによる赤や黒のスカジャン、もしくはハーフパンツに採用。AIによってもっともらしく語られる架空の神々の姿は、アルフォンス・ミュシャの代表作である《スラヴ叙事詩》からも着想を得ているそう。
壁や境界線のメタファーともとれるボーダー柄やストライプ柄使いにも注目。赤・青・白から成る“汎スラヴ色”のボーダー柄を解いてフリンジ状に編み上げたニットは、壁や境界線を取り除き、分断された世界からの解放を意味している。
最後に、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボレーションによるTシャツにも触れておきたい。また、作中に登場する架空のバリア「A.T.フィールド(Absolute Terror Field)」をイメージして開発した、ナイロン扁平糸を編み上げたシアーな素材をトレンチコートやロングスリーブシャツ、スカーフに採用した。