ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)の2024-2025秋冬コレクションが、2024年3月13日(水)に東京の泉屋博古館東京にて発表された。
「大人とは何か?」ヨウヘイ オオノの2024-25年秋冬コレクションは、この問いに対する1つの答えを提示したといえるだろう。先シーズンの2024年春夏コレクションではデザイナーである大野陽平が、自身の幼少期をある種アヴァンギャルドな表現として昇華していた。落ち着いたムードが漂う今季は、それとは一線を画すように感じられる。しかし当然ながら、子供も大人も、1つの人生の中に存在しているということを忘れてはならない。
大人という単語はしばしば、成長や成熟、転じてラグジュアリーといった言葉に結びつけられる。だが大野陽平はブランド開始から10年が経った現在でも、「ラグジュアリーは“遠いもの”だ」と語る。「大人へ向けたクラシック」という挑戦を、あくまでブランドらしく、ばかばかしく捉える。そのフラットなスタンスが、かえって“気品”を生み出しているように思う。
特筆すべきは、気取らないノンシャランな雰囲気を醸す、身体に馴染むようなマテリアルだ。例えば、ファーストルックであるスタンドカラーのストライプシャツドレスや、穏やかな色味のセットアップ、ブラックのワンピースなど。フラノウール素材をはじめ、クラシカルかつ軽やかな生地を多く用いることで、オーセンティックなピースを緩やかで落ち感のある表情に仕立てた。
“貴婦人のしぐさ”から着想したアイテムは、子どもがパーティーの準備をする大人を見たときのような、“大人の世界”への憧憬と高揚感を思わせる。裾部分の生地を手首にかけることで、バッグと服が一体化したかのように見えるロングコートやナイトドレスなど、構築的でユニークな提案がなされた。
エレガントなルックが多い中、子ども心をくすぐられるヨウヘイ オオノらしいアイテムも散見。蝶々結びを立体的に表現したかのようなべストや、スカート部分にワイヤーを入れ、風にひるがえっているようなフォルム仕立てたワンピースなどが並ぶ。さらに、“腕”のモチーフに大ぶりのゴールドチェーンを合わせたハンドバッグなど、健康的な人体をかたどった品々が、コレクションに遊び心を差し込んだ。
ピアスやグローブの先で煌めくジュエリーは、日高俊による「ヒダカ(HIDAKA)」、村田志文による「エスエスピー(ssp.)」とのトリプルコラボレーションによるもの。河原で拾ってきた石を、メタルやパールの質感に加工し、高価なジュエリーのように用いた。価値の異なるものが1つの中に共存する様は、時に“へんてこ”だが、他の何にも代えられない自分というものの絶対的価値を打ち出しているようにも感じられた。