ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)の、2024年秋冬コレクションを紹介。
2024年秋冬シーズンのテーマは、太宰治。自己批判的な傾向を強めながらも、素朴なものや自然のものをそのまま紙に写し取り、文筆に勤しんだ太宰治の作品が、今季のインスピレーション源となっている。また、ピアニスト島田瑠璃、現代音楽家の小杉武久による楽曲「記憶の海」といったどこか不穏さの漂う音楽からも着想を得た。凛とした静けさ、シンプルさの中に退廃的な空気感を加えた、独特の佇まいを表現している。
象徴的なのは、文豪のような雰囲気をまとうダークトーンのウェア。ブラックのスーツ地を用いた直線的な仕立ての着物ジャケットは、袴型のワイドフレアパンツと合わせて緩やかな着こなしに。また、生地をたっぷりと使って仕立てたAラインのステンカラーコートや、衿を立てると切り込みの入ったハイネックになるシャツ、渋いブルーのチェックシャツなど、クラシカルな表情のアイテムが、昭和の文豪の持つ趣を感じさせる。
穏やかでありながら、インパクトを残していく柄にも注目だ。ジャケットやオープンカラーシャツ、ニット、パンツなどに大胆に施された薔薇モチーフは、実際に撮影した薔薇をベースに陰影を加え、まるで奥深く渦を巻いているかのような表情に仕上げた。なお、柔らかなニット地には柄を大きくあしらい、カットソーには比較的小さめの薔薇を総柄にするなど、素材に合わせて柄のピッチを変えている。
上品な光沢を備えたしなやかなブラウスや、スカジャンには日本画家の作品をモチーフにした和柄をレイアウト。鯉や鶴、龍、蝶を題材に、植物や風景と合わせて繊細に描かれた絵柄は、自然の躍動と静寂を同時に想起させ、神秘的なムードをもたらしている。『人間失格』の言葉の響きにフォーカスし、豪快なタッチで表現したグラフィックTシャツや作中に登場する「へへののもへじ」を筆で描いたキャラクターTシャツもまた、余韻を残していくようなデザインが印象的だ。
今季もラッド ミュージシャンらしい分量感やドレープが随所に見られるものの、身体とつかず離れずの距離感でそっと沿うようなシルエットが特徴的だ。ラグランスリーブのジップパーカーは、ゆったりとした袖が着物のように落ち、優雅なドレープを描く。シルエットに変化をつけ、裾に向かってボリュームアップしていくワイドパンツは立体的でありながらしなやかなフォルムを見せる。
また、シャギーモヘアのシャツジャケットや保温性に優れた中綿「シンサレート」を入れたブルゾン、ダブルのテーラードジャケットといったアウターは肩をドロップさせ、ゆとりを持たせて身体のラインになじむように仕立てた。