香川県さぬき市に工場を構える縫製工場、川北縫製。そのファクトリーブランドとして2009年に誕生したのが、カーリー(CURLY&Co.)だ。長年にわたって培われた高い縫製技術のもと、カーリーは伸縮性に優れたカットソーを用いて、着心地の良い服を手がけてきた。ファクトリーブランドならではの丁寧なもの作り、それに対する思いとこだわりを紹介する。
カーリーを擁する川北縫製が誕生したのは、1963年のこと。手袋産地である香川の地で、手袋製造を始めたのであった。その後の1968年、手袋製造で培われた緻密な縫製技術をベースに、Tシャツなどを手がける縫製工場を設立。アメリカを中心に、海外向けの製品を生産していたものの、1990年代の円高に伴い、国内向け生産へとシフトしていった。
川北縫製は長年、OEM(original equipment manufacturing)、つまり他社ブランド製品の委託生産に携わってきた。そこでは、品質はもちろんのこと、1日のうちにどれだけ生産できるかという尺度によって、技術の高さが計られたという。しかし、製品の質と量が求められるようになるなか、1990年代半ばからは、生産コストの低い中国などの海外生産に比肩するのは容易ではなくなってきた。
カットソー素材を用いて、クリーンなデザインのウェアを展開しているカーリー。そこに底流するのが、着心地の良さだ。それは、縫製職人をはじめ、服作りに携わる職人たちの高い技術によって叶えられる。しかし、技術は長い時間をかけて培われていくものである。そこでまずは、カーリーならではの技術が育まれた足跡を探っていこう。
長年にわたって培われてきた技術をいかに活かすか。それが、顧客に向けて直接訴えかけることであった。こうしたなか、ひとりの青年との出会いが、カーリーの誕生へとつながっていくことになる。香川・高松のセレクトショップでバイイングと販売に携わっていた青年とともに、川北縫製は当初、オンライン販売を軸としたブランドを立ち上げた。
このブランドはしかし、大きな壁にぶつかることになる。川北縫製のアイテムは、伸縮性に優れたカットソーを用いているため、最大の強みはその着心地の良さにある。ところが、オンライン上では、服の質感や風合いを充分に伝えることが難しかったのだ。
この壁をきっかけに、川北縫製は、実物に触ってもらうことを意識するようになった。カットソーのアイテムにとっては、店舗に置いて、実際に顧客に触ってもらうことが、その魅力を伝える最良の方法である。カーリーはこうした反省をふまえて、卸は展示会をベースに、直営店での直売を中心としたスタイルで誕生したのであった。
そして、カーリーならではの着心地を生みだすのが、技術にほかならない。それは、パターンから縫製まで、何よりも職人の手によるものである。そこで続いては、長い時間をかけて蓄積された、カーリーならではの技術に光をあてていこう。
ファクトリーブランドであるカーリーは、企画からパターン、縫製、検品まで、服作りの全工程を同じ建物の中で行っている。着心地に優れるカーリーならではの服ができるまで、企画から裁断、縫製、検品までを、順にたどっていこう。
【服作りのプロセス】
企画:服を設計する
延反:ロール状の生地を伸ばす
裁断:パターンに沿って生地を切る
縫製:生地を縫い合わせる
検品:できあがった服をチェックする
カーリーでは、デザイン、動きやすさや着心地を追求するべく、川北縫製の縫製職人とともに何度も修正を加えて、服のパターンが作られていく。縫製現場からの意見を取り入れつつパターンを作成できる点が、ファクトリーブランドとしての強みだ。
服を形にしていくことは、生地から始まる。パターンに沿って生地を裁断する前に、棒に巻かれた状態の生地をまっすぐに延ばして、重ねていく必要がある。この工程が「延反」だ。これは、専用の機械を使って行われる。
延ばすといっても、単純に生地を広げればよいわけではない。カーリーのカットソーで使用する素材はニット、つまり編み物であるため、伸縮性を持っている。だから丸く巻いてある生地を広げようと引っ張ると、生地が伸びてテンションがかかる。このまま裁断してしまうと、生地がパターンよりも縮んでずれることになる。そこで、延反の際に生地をリラックスさせる必要があるのだ。