カットソーをリラックスさせるためには、生地を広げて、バイブレーション(振動)を与えればよい。延反機は、生地を載せた状態でバイブレーションを加えられるため、これによって生地のテンションを完全に取り除くことになる。
生地の種類によってテンションのかかり方は異なるため、延反時には、それに応じてバイブレーションの強度を調整する必要がある。また、伸縮性を持つポリウレタンを含む生地の場合、別の機械を用い、蒸気を当てることでテンションを取ることになる。このように、生地ごとに適切な方法と加減でリラックスさせることが、延反のポイントになるのだ。
延反を行い、10枚ほどを重ねた生地は、服のパターンに合わせて裁断される。ここで使用するのが、自動裁断機だ。裁断機の先には、糸のこぎりのような細い刃物が装着されており、これが上下に動くことで、重ねた生地を一気に裁断していく仕組みである。
自動裁断機を用いる利点が、「ノッチ」と呼ばれる、パターンの縁の突起部位を容易に作ることができる点。ノッチは、たとえば前身頃と後身頃を合わせたり、袖を付けたりする際、生地同士を合わせる印になる。かつてノッチは、手で入れていたという。ノッチは小さな三角形であるから、これを作るには高い技術を要する。しかし、自動裁断機を用いれば、こうした細かな操作も簡単に行うことができるのだ。
裁断を行った生地は、服を構成するパーツごとに分けて、それぞれにまとめて、縫製現場へと送ることになる。
裁断を行った生地のうち、服を構成するうえで伸び縮みを抑えたい部分には、接着芯を貼っていく。この工程は、「芯貼り」と呼ばれる。芯貼りを行う部位には、たとえば見返しなどを挙げることができる。川北縫製では、ニット芯と呼ばれる接着芯を用いており、これは生地に貼っても多少の伸縮性を持つ点が特徴だという。
縫製の前工程として、折り返した生地にアイロンがけを行う。これによって、縫製が行いやすくなり、結果として丁寧な仕上がりにつながってくるのだ。
こうした複数の工程を経たのちに、縫製に移る。カーリーならではの快適な着心地を生む要となっているのが、職人の高い技術による、丁寧な縫製にほかならない。
縫製の高い技術を示す例のひとつが、パンツだ。ニット素材は、ルーブを連ねることで編み地が形成されているため、縫製時に針が糸を切ってしまい、「針穴」と呼ばれる穴が生じやすい。とりわけパンツでは、着用時に強いテンションのかかる股下の部分に針穴ができると、そこから大きく裂けてしまう。そのため、ニット素材のパンツの縫製時には、高い技術が要求されることになるのだ。
ニットを縫製する際には、先の尖った通常の針ではなく、先の丸まった「ボールポイント」と呼ばれる針を使用する。すると、針が生地に向かって落ちるとき、その先がループの糸を避けるため、糸切れを回避することができる。しかし、ボールポイントの針を使用する場合も、縫うスピードを上げれば、ミシン針と糸の摩擦によって糸切れが生じるため、適切なスピードで縫っていく必要がある。
カーリーでは、生地の種類に対応して、さまざまなミシン針を使い分けている。また、丁寧に縫い進めていくことで、摩擦を抑えている。こうして針穴を防ぐことが技術にほかならないのであり、これによって履きやすさ、着やすさが生まれることになるのだ。
もちろん技術とは、パンツの針穴を防ぐ、ミシン針の使い分けにはとどまらない。アイテムやデザインごとにステッチ幅を調整するばかりでなく、生地の特性に応じて、さまざまなミシンの針板などを使いわけているのである。