映画『ウィキッド ふたりの魔女』で日本語吹替版を務める高畑充希と清水美依紗にインタビュー。
映画『ウィキッド ふたりの魔女』は、不朽のブロードウェイミュージカルとして20年以上愛され続ける「ウィキッド」を映画化するもの。魔法と幻想の国・オズを舞台に、見た目も性格も正反対の2人の魔女、グリンダとエルファバの友情を描く。
誰よりも優しく聡明でありながら、のちに“悪い魔女”として知られることになるエルファバを演じるのは、グラミー賞やトニー賞など数々の受賞歴を持つ歌手シンシア・エリヴォ。一方、チャーミングで人気者の“善い魔女”グリンダを、世界的なアーティストであるアリアナ・グランデが演じる。
今回は、『ウィキッド ふたりの魔女』で日本語吹替版を務めた高畑充希と清水美依紗にインタビュー。シンシア・エリヴォの大ファンだという高畑と、アリアナ・グランデの大ファンだという清水に、『ウィキッド ふたりの魔女』の魅力をたっぷり伺った。
まず最初に、『ウィキッド ふたりの魔女』のオーディションがあると聞いた時の心境を教えてください。
高畑:本当にびっくりしました。というのも、本国の映画公開が2024年の11月で、吹替オーディションのお話を聞いたのがその直前でした。秋までオーディションの情報を聞かなかったので、もう日本語吹替版を作らないか、既に声優さんが決まっていると思っていたんです。
清水:本当に最近のお話ですよね。私も「オーディションあるの!?」って驚きました。
高畑:だよね。自分にもまだチャンスがあるとは夢にも思っていなかったので、「オーディションがあるなら絶対に挑戦したい!」と思い、お話を聞いてすぐに受けることに決めました。
グリンダとエルファバ、どちらの役を受けるか迷いませんでしたか?
高畑:シンシア・エリヴォの大ファンということもあり、最初から「どうしてもエルファバ役を…!」という気持ちでした。あとは個人的に、エルファバのような力強い役柄をあまり演じたことがなかったので、チャレンジしてみたくて。
清水:私はアリアナ・グランデが大好きなので、アリアナの演じるグリンダ役で絶対にオーディションを受けたいと思っていました。私は高畑さんと逆で、今まで結構力強い役をやってきたことが多かったので、グリンダのように軽やかな感じのキャラクターは新境地。グリンダならではの、コロコロと音が回るような、オペラ的な歌い方にも挑戦してみたいなという気持ちでオーディションを受けました。
実際、オーディションはいかがでしたか?
高畑:「ウィキッド」の曲を思い切り歌える機会なんてなかなかないので、あの名曲を歌えただけでもう大満足でした。オーディションを受けている時が1番ハイになっていたかも (笑)。
清水:分かります!グリンダというキャラクターを少しの間だけでも生きることができたという満足感がありました。
結果発表の瞬間はどんな気持ちでしたか?
清水:受かる期待は60%くらい、残り40%は期待しないで待っていたのですが、マネージャーに結構あっさりと「ウィキッド、合格!」と言われて。
高畑:こっちは緊張して待っていたのにね(笑)。
清水:そうなんです。すごくあっさり伝えられて(笑)。後からじわじわと現実味が増してきて、プレッシャーで「やばい。」という気持ちになりました。でも、アリアナのいちファンとして、アリアナが夢を叶えた作品に声をあてることができるのはすごく光栄ですし、嬉しかったです。
高畑:私は、「歌えただけでも満足、受かったらラッキー」だと思って結果を待っていました。なので、本国から合格をいただいた時は「え、本当?」って(笑)。信じられないくらい嬉しかったです。
高畑さんのインスタグラムの投稿からも、喜びと興奮が伝わってきました。
高畑:嬉しさ大爆発しちゃいました(笑)。でもそれと同時に、「本当にやるのか…」というプレッシャーもすごくて。多くの人が好きな作品だと思うので、今もとてつもない重圧を感じています。
高畑さんは、日本だけでなく本場NYでも観劇されるほど「ウィキッド」が大好きだそうですね。それほどまでに心を惹きつける「ウィキッド」の魅力とは何でしょうか。
高畑:やはり1番は、圧倒的な楽曲の良さだと思います。「ディファイング・グラヴィティ」のようにパワフルだったり、「ポピュラー」のようにキャッチーでみんなが歌いたくなるなる曲があったり、いろんなジャンルの曲が作品を彩っているのが魅力です。
あとは、人種差別であったりとか、普遍的な問題を根底に置きながら、こんなにもエンターテインメントの作品に仕上げているというのも「ウィキッド」の素晴らしさだと思います。アメリカでは、「ウィキッド」は誰もが知ってるような作品なのですが、日本では多分まだそこまで浸透していない印象がある。なので、この映画をきっかけにもっと作品のことを知ってもらえたらいいなと思います。
清水さんと「ウィキッド」の出会いも気になります。
清水:もともと作品自体は知っていましたし、音楽も知っていたのですが、初めて舞台を観劇したのはニューヨーク留学中の2018年でした。その時は、人間関係で悩んでいたことや、苦しいなと思っていたこと、たくさんあって。でも、この作品に背中を押してもらって、すごく勇気をもらえたのを今でも覚えています。できることなら、もっと早く「ウィキッド」に出会いたかったです。
舞台「ウィキッド」とはまた違う、映画版ならではの魅力は何でしょうか。
高畑:舞台版は、遠くから見るので構造がかなり分かりやすく作られている印象があって、全体でパワーをもらえるのが魅力だと思います。一方映画版では、登場人物の細かい心の機微をクローズアップの画面で見られるのが良い。“ウィキッドオタク”の私も、実際に映画を観て、より作品の理解が深まった感じがしました。
舞台版と映画版、それぞれで違った魅力があるので、今回初めて「ウィキッド」に出会う方も、舞台版からのファンの方も、映画を楽しんでいただけると思います。
お2人はオーディションで見事にこの役を勝ち取っていますが、これまでにオーディションで挫折した経験はあるのでしょうか?
高畑:もちろんあります。受ける役、受ける役、ほぼすべてのオーディションに落ちていた時期もありましたし、今でも普通に落ちますよ。でもそういう時は、「自分のどこがダメだったんだろう?」と考えるより、ただ役に合わなかったんだなと思うようにしています。
特に今回のように、海外の方が選考する声のオーディションなんかは、声の質とキャラクターが合うかで選ばれることもあるので。もし落ちても、自分がうまくできなかった部分を責めるのではなく、ただ縁がなかったのだと割り切るようにしています。
清水:めちゃめちゃ同意見です。
高畑:落ちるときは落ちるよね。
不合格でも、あまり落ち込まないですか?
清水:ニューヨークに歌の留学をしていた時は、周りのレベルが高すぎてよく落ち込んでいました。でも今は、オーディションに落ちても「はい、次」という感じ(笑)。もちろん悔しい気持ちはあるのですが、ダメならダメで次にすぐ切り替えられるメンタルになりました。
高畑:すごく分かる。でも私、すごく自分の声にフィットしていると思った声優のオーディションに落ちたことがあって、それはすごく落ち込みました(笑)。自分の声質とすごく合っていると思っていたから、なんで不合格なんだろうって、その時ばかりはがっかりしちゃって。それで言うと、今回の『ウィキッド ふたりの魔女』は自分の声質と合うか分からないなと思いつつ受けた作品だったので、もしかしたら不合格でもあまり落ち込まなかったかもしれないです。
清水:高畑さんがおっしゃっていたように、本当に作品と出会えるのはご縁なんでしょうね。色々な縁が繋がって今のお仕事ができているのだなというのは、日々痛感しています。