サスクワァッチファブリックス(Sasquatchfabrix.)の2025年春夏コレクションが発表された。テーマは「i&i」。
約20年前のサスクワァッチファブリックスは、ご機嫌なダンスミュージックが流れる東京の片隅にあった小さなコミュニティーにて、夜な夜な集まってはヒネた話で盛り上がり、ざっくばらんな意見を出し合ってはモノづくりを楽しんでいた。レヴィ=ストロースが著作「野生の思考」の中で提唱したブリコラージュという概念と全く同じように、当時はその場にある“元ネタ”をベースに、解体と再構築を繰り返していた。
そんな、あまりにも自由ともいえる製作環境を経た現在、何かを表現することは窮屈であると感じたという。複雑化する世の中において、大切なのは自分を愛すること。そうして初めて他者を愛することができる。2025年春夏コレクションでは、ジャマイカのラスタファリ運動から生まれ、ボブ・マーリーの楽曲に代表されるように、レゲエミュージックでよく用いられる「i&i」がテーマ。陽気に踊り明かし、純粋に自分たちのものづくりを楽しんでいた頃にオマージュを捧げた。
あの頃の陽気なムードを表すために用いたのが、メキシカンスタイルだ。そのため、メキシカンらしい鮮やかでポップな刺繍が多く見られる。たとえば、シャツには縁起が良いとされるモチーフの刺繍をオン。太陽やヘビ、サボテンなど幸運をもたらすモチーフと共に、メキシコらしい花々を散りばめた。
メキシコでは、住宅の壁や屋根、ドア、さらには服などを原色で彩る文化がある。スペイン語で“生きている色”という意味の“Colores Vivos”という言葉があるように、赤や黄色、青など、コントラストが際立つカラーをコレクションの随所で使用している。鮮やかな色彩を活かしたボーダーや花柄など、メキシコをはじめとする南国で見られるようなプリントをトップスやパンツに取り入れた。鮮やかなカラーとは対照的に、くすみカラーをベースに古代の神様風のプリントをあしらったシャツも登場する。
パンツはいずれも、ワイドなシルエット。その中でもひときわフレアなのが、ラップ風に布を重ねた“巻き”パンツだ。コレクションに漂うエキゾチックな雰囲気を、ブランドらしく昇華させたデザインとなっている。デニムやコットンなど、様々な素材で仕立てた。
なお、20年ほど前のサスクワァッチファブリックスがよく使っていたのが、メキシカンスカルのモチーフであった。今季は、あの頃を懐かしむように、当時使っていたモチーフをアップデート。メキシコの守り神であるメキシカンスカルの刺繍を施したウォレットを手掛けた。