ラストネスト(LAST NEST)の2025-26年秋冬コレクションが、2025年2月13日(木)、神奈川・川崎の東扇島東公園にて発表された。テーマは「Nightmares and Dreams」。
ラストネストは、マサアキ・イワセが2018年に立ち上げた日本のメンズブランド。ブラックを基調に、ストリートウェアとラグジュアリーを融合させたデザインのウェアを展開している。
クリエイティブディレクターのマサアキ・イワセは、神奈川県川崎市生まれ。自身を取り巻く荒れた環境により、幼少期から苦しい生活を余儀なくされたという彼は、過去を振り返って「悪夢のような日々だった」と話す。そんな中、唯一の光となったのがアメリカのヒップホップカルチャーだった。生まれや育ちに関係なく、大きな夢を持って生きるヒップホップスターの姿に影響を受け、自身も洋服に携わる仕事がしたいという目標ができたのだという。
初のランウェイショー開催となる今季、テーマに掲げるのは「Nightmares and Dreams」。川崎の地で過ごした"悪夢"のような日々と、音楽に出会って見つけた"夢"ーーー自身のルーツにスポットライトを当てながら、ブランドを改めてイントロデュースするようなコレクションを展開する。
まず注目したいのが、ラストネストを象徴するイミテーションレザーのアイテム。“LAST NEST”のロゴを胸に配したプルオーバーや、ふわりと空気をはらんだパファーベスト、ロング丈のステンカラーコートなど、艶やかなレザー風素材が多彩な形で提案された。とりわけ目を惹いたのは、“幸運”を象徴する白い鳩を描いたライダースジャケット。漆黒のレザーに舞う鳩のペイントは、「暗闇の中でも軽やかに飛べる」というイワセのメッセージのようにも感じられる。
“ヒップホップへの憧れ”を詰め込んだルックも印象的だ。たとえば、大ぶりのチェーンやクロスモチーフを首元にプリントしたフーディは、シルバーアクセサリーをじゃらじゃらと身に纏うラッパーの姿から着想を得た1着。顔を覆い隠すバラクラバも、アメリカのラッパーの定番スタイルから引用したものだ。
全体を通して、シルエットは身体に心地よく沿うジャストフィット。“Rebellious(=反抗的な)”の文字を大胆にあしらったスウェットや、しなやかなベロアジャージのセットアップなど、ストリートなアイテムを中心としつつも、ルーズ過ぎないシルエットでラグジュアリーに引き寄せている。パンツも、多くはストレート、あるいはスリムフィットを採用し、すっきりと洗練された印象に仕上げた。
カラーパレットは、重厚な雰囲気を引き立てる黒で統一。時折、大胆な柄を織り交ぜアクセントを加えた。半袖のTシャツには、コンクリートの壁や錆を思わせる掠れたようなプリントをオン。ゆったりとしたクルーネックニットは、ピンクやパープル、ブラックのタイダイ模様で染め上げている。
ショーの終盤には、イワセの実弟である、ラッパーのYZERR(ワイザー)とT-Pablow(ティーパブロ)が登場。T-Pablowは歌唱しながらランウェイを周回し、フィナーレを盛り上げた。川崎ならではの工場地帯が並ぶ“地元”の会場で、弟が兄の作った洋服を着て歩くーーーイワセが感じた夢や悪夢を表現するのに、最も説得力を伴った演出でショーが締めくくられた。