魅力的なコード刺繍を、どのように現代のかたちへアップデートするか。そこでは、始まりから新たな挑戦に向き合う必要があったという。
ミューラルのコード刺繍では、レーヨン糸、ラメ糸、コード糸の3種類を使っている。実は、これは大きな挑戦であった。というのも、コード刺繍の機械では2色の切り替えが限界だからだ。そこで、コード糸を抑える糸に工夫を凝らすことに。糸にも、マルチカラーのラメ糸と極太のコード糸という、これまで刺繍で用いらことのないものを使用した。
コード刺繍の機械は、文様をデータ化した「紋紙(もんがみ)」で動く。今回は、ラメ糸、レーヨン糸、コード糸という3種類の糸を使っているので、必要な紋紙は3枚。これらを順々に使い、同じ生地に刺繍を行っていくのだ。
もちろん、ひとつの刺繍が終われば、機械にセットしてある生地を、ズレなく最初の位置に戻さなくてはならない。刺繍を行っているあいだも、少しでもズレが生じれば、機械を止めて生地を動かして合わせる必要がある。このため、職人は刺繍の柄をあらかじめ頭の中に入れて、機械を動かしている。ミューラルのコード刺繍は、職人が長年にわたって培ってきた経験と技術がなくてはできないものなのだ。
ミューラルの刺繍生地は、主に北陸で作られる。コード刺繍のサンプル生地を製作する時期、この地域は大きな地震に見舞われた。資源の高騰や後継者不足など、厳しい状況が産地を取り巻くなか、地震は切目に塩を塗るようなものであった。
このまま製作を続けるべきであるかどうか、デザイナーの関口と村松が悩むなか、職人からこう言われたという——「大丈夫。無理難題をくれたほうが、ぼくたち職人はもっと成長できるから」。
製作をお願いしてもよいのだろうかという不安は、何としてでもコード刺繍の技術を形にして、世の中に伝えなければならないという使命感へと変わった。どんなに素晴らしい技術でも、伝わらなければ意味がない。その技術にどういった歴史があり、どういった努力や工程から生みだされているのか。技術を継承するには、それを使い、粛々と伝える以外にない。「技術の継承と発展」への思いが、ミューラルのコード刺繍には体現されている。
コード刺繍を用いた、ミューラルの2025年春夏コレクションのウェアを紹介。花のような曖昧な形をモチーフに、立体感あふれるコード糸にラメ糸が華やぎを添える、ドレスやスカート、シャツなどがラインナップする。
全面に刺繍レースを採用したドレスは、アシンメトリックなデザインと複雑なパターンが織りなす、ダイナミックなドレープ感が特徴。片方をオフショルダーで仕上げることで、絶妙なセンシュアルさと抜け感を漂わせた。カラーは、ブラックの1色を用意する。
ケープショルダーのドレスは、フロントを刺繍レースで切り替え。優雅な量感を湛えたショルダー、ほどよくシェイプをきかせたウエスト、緩やかに広がるAラインシルエットが、上品な佇まいを醸しだしてくれる。カラーは、ベージュとブラックの2色展開だ。
そのほか、ストレートラインのスカートや、カーディガンを組み合わせたデザインのシャツ、全面に刺繍レースを用いたノースリーブトップスなども展開。カラーはいずれも、繊細なベージュ、ブラックの2色を取り揃える。
ミューラル コード刺繍アイテム
発売日:2025年3月5日(水)
取扱店舗:全国の取扱店舗、ミューラル 公式オンラインストア
展開アイテム:
・Seem flower lace asymmetry dress 198,000円
・Seem flower lace dress 66,000円
・Seem flower lace shirt 49,500円
・Seem flower lace tops 36,300円
・Seem flower lace sleeveless tops 41,800円
・Seem flower lace skirt 52,800円
・Seem flower lace gloves 13,200円
カラー:グレー、ブラック
※「Seem flower lace asymmetry dress」はブラックのみ
■予約制ストア「サロン ド ミューラル(Salon de MURRAL)」
・東京
日程:2025年3月29日(土)〜31日(月)
住所:東京都港区南青山3-14-15 kawamata bldg 2F「3E STUDIO」
時間:3月29日(土)・30日(日) 10:00〜18:00、31日(月) 10:00〜19:00
・大阪
日程:2025年4月5日(土)・6日(日)
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-7-6 心斎橋中央ビル B1F「OSAKA SPACE」
時間:4月5日(土) 10:00〜19:00、4月6日(日) 10:00〜17:00
※いずれもミューラル 公式オンラインストアより要予約