まとふ(matohu)の2015年春夏コレクションが東京・六本木で発表された。コレクションのキーワードは「素(しろ)」。“素”とは白いことではなく、自然でピュアな色、生成りであるということ。そして“素”とは日本文化の中心にある、「ありのまま」の美しさのことだ。
会場に入ると真っ先に目に飛び込んでくるのは、素木(しらき)で作られたランウェイ。皮が削られた自然のままの木材のセットからは、ほんのりと木の香りも漂ってきた。ピアノ単音の曲が流れる中、オフホワイトのワントーンルックが登場し、ショーは幕を開ける。最初はオフホワイトやベージュ、純白でまとめたスタイルが中心。軽やかな素材感やシースルーのディティールが涼しげな印象だ。また、木目をイメージしたような柄がナチュラルな魅力をさらに醸し出す。
中盤に入ると、イエローやブルーを使ったスタイルも登場。洗いざらしのシワ感を作った麻のジャケットや着古したようなベルベットを使ったジャケットなど、先ほどのホワイト系の色合いが時間の経過とともに色づいていく。デザイナーの堀畑裕之が「素とは時間の経過を経る美しさでもある」と語る通り、ヌメ革で作られた靴はその象徴で、履く人が時間の経過を感じながら風合いの変化を楽しめる。
その後はダークトーンが続き、デニムオンデニムの着こなしや、ブラックのレースシャツ、ブルー、ブラック、グレーのストライプが印象的なドレスなど、全体的にゆったりとしたシルエットの装いが登場。暗いトーンのなかで、ブランド初制作の靴下が色味を加えているのもポイントだ。
そして最後はまた純粋な色の美しさへと戻る。ドレープやプリーツで軽やかさを出した着こなしに、籐で編まれたヘッドアクセサリーをオン。最後はナチュラルな白を全身まとったスタイルで、ショーは幕を閉じた。ブランド10回目のコレクションとなった今回。「素の白に戻ってくることで原点回帰をした」と堀畑は言う。古びた物を新しくするのも美しさ。日本人が持つ「素」の美しさに気づかされ、また時間を重ねることも、その時間を消して新しくすることも美しさなのだと、気づかされた。