ケイコ ニシヤマ(KEIKO NISHIYAMA)の2025-26年秋冬コレクションが、東京ファッションウィーク会期中の2025年3月22日(土)に発表された。
様々な珍品を集めたヨーロッパの博物陳列室「驚異の部屋」から着想を得て、好奇心を刺激するようなコレクションを展開しているケイコ ニシヤマ。“空想上の動植物”をモチーフにした幻想的なテキスタイルがブランドの代名詞だ。
今季のケイコ ニシヤマが掲げるテーマは「追憶 ー Reminiscence ー」。記憶の奥底に沈む、名もなき景色や懐かしい面影からインスピレーションを得て、叙情的なムードのコレクションを作り上げた。また今シーズンより、産業用インクジェットプリンタを手掛ける ミマキエンジニアリングとタッグ。空想を掻き立てるような絵柄に加え、新しい技術も取り入れている。
まず注目したいのは、“記憶の片隅に咲く花”をモチーフにしたオリジナルテキスタイル。デザイナーの西山景子が亡き父へのオマージュを込めたというこの絵柄は、ドレスの裾やスリーブ、シャツの襟などにさりげなくあしらわれ、コレクションに静かなる華やかさを添えている。
遠く淡い記憶、そのやわらかな輪郭をなぞるように、シルエットはゆったりとエフォートレスに仕上げた。リボンタイ付きのトップスは、袖に弛みを持たせ、身体を優しく包み込むような柔らかさを演出。またロング丈のシャツコートも、なめらかな素材使いとアクセント配したプリーツにより、優美な落ち感を醸し出している。
丸みを帯びたディテールデザインにも注目したい。シャツのウエスト部分にあしらわれたノットは豊かにドレープを寄せ、シルエットのしなやかさを助長。ゆるやかにカーブを描くステッチ、袖口の曲線的にカッティングなどもまた、コレクションの柔らかなムードを引き立てた。
また今季は、これまでの装飾的なアプローチを大切にしつつも、より日常に寄り添ったデザインに仕上げている印象。フェミニンなギャザーやチュールを排除し、ジェンダーレスな佇まいのアイテムを新提案した。たとえばシャツジャケットは、袖を花のオリジナルテキスタイル、ボディをシェブロン柄で切り替え、ベストを重ね着しているかのようなメンズライクなデザインに。シンプルなスウェットシャツも、ケイコ ニシヤマには珍しいカジュアルなピースとなっている。