スケートランプを連想させる高低差とうねりがある独特の形状をしたランウェイ。その奥の壁には、グラフィティが描かれていて、森川のDNAに刻まれているパンクというよりはアメリカ西海岸の横ノリの雰囲気だ。
クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)の2015-16秋冬のインスピレーション源は、1970年代のカリフォルニアのヴェニスのスケートカルチャー、ロックカルチャー。なかでも、昨年他界したスケートボード界のレジェンド、Z-BOYSのジェイ・アダムスの生き様、スタイルに影響を受けている。その70年代の西海岸のカラッとした乾いた空気感に、ロック、ゴシックの要素を融合させることで、森川流の70'sを紡いでいる。
キーワードは、1.ハイウエストのジーンズ、2.チェックのシャツ、3.「FRAGILE」のグラフィック、4.スケートボード、5.ファイヤーパターン、6.ウエスタン調のフリンジ、7.パッチワーク――と盛りだくさん。ハイウエストのジーンズは、ブーツカットのシルエットや激しいスケートの動きで破れた部分をバンダナやいらないデニムで補強したパッチワークが特徴。チェックのシャツはいかにも70年代のスケーター的な雰囲気を醸し出している。“壊れ物"を意味するFRAGILEの赤いモチーフは、ジェイ・アダムスの破天荒な生き様を表現したのだろうか……。
スケートボードのモチーフは、ボードの中央部分をレザーで包んだクラッチ風のバッグや、ボードを扇子状にしたショーピースなどで表現。ブランドの人気アイテムであるライダースジャケットは、得意とするスタッズを封印し、ファイヤーパターンやパッチワークを細身のシルエットに落とし込んでいる。後半はラフなスケーターのスタイルに、ウエスタン調のフリンジのレザージャケットやダダらしいファーのアイテムを合わせた。
カラーパレットは、ブラック、ホワイト、デニムのブルー、ウエスタン調のブラウンをベースに、レッドを効果的に挿している。ダダと西海岸はこれまであまり結びつかない要素だったが、ロックやゴシックの匂いを消さずに新境地を開拓することに成功している。
Text by Kaijiro Masuda(Fashion Journalist)