2015年3月4日(水)、ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2015-16年秋冬コレクションが、パリファッションウィークにて発表された。
今季ドリス・ヴァン・ノッテンは、服を身に着けるという概念から少し離れて、コレクションを創り上げたようだ。自らの身体をトルソーに見立て、愛好している洋服を飾っているという感覚に近いのだろうか。というのも、テイストの統一などといった固定観念から脱したようなルックが、コレクションを占めていたからだ。
光沢感のあるジャカードコートからショーはスタート。しかしこのコートも、下半分はキルティング、センターには毛足の長いフェイクファーがあしらわれ、素材の統一感はない。そこに、たっぷりとしたシルエットのチノパンツとジャカードのトップス、さらに花模様のクラフトが連なるネックレスを合わせ、独創的なコーディネートが展開された。その後も、大きなスパンコール付きのトップスとミリタリー風スカート、ペプラムジャケットとハーフパンツなど、不調和音が聞こえそうな斬新な組み合わせがつづく。
様々な要素が混ざり合っているが、一貫性を失わず、不思議と同じ空気感になるのは、やはりファブリックのおかげだろう。中国趣味の美術様式“シノワズリー”や19世紀の屏風から着想を得たものや、天然の顔料で描かれたハンドプリントなどが、ゴージャスでエキゾチックなムードを漂わせる。そこに、7色に輝くスパンコール、瞬くようなゴールドを添え、よりドラマティックな仕上がりに。
一方で、新しいベルトの使い方にも注目したい。床にひくほどロング丈の布と1つになり、装いを飾りたてる。心が惹かれてしまう後ろ姿、後をひく余韻。そういった要素は、キーワードの1つとして挙がった“芸者”とリンクしているのかもしれない。
会場となったパリ市庁舎は、1357年の設立以来ずっと同じ地で、フランス革命やパリ・コミューンの設立といった歴史的大事件はもちろん、公開処刑や市庁舎の焼失といった悲しい出来事も含めて、パリを見守ってきた。
そんな場所を発表の地として選らんだ、ドリス・ヴァン・ノッテン。今季はどこか、パリの歴史とシンクロしている気がする。洋服作りにインスピレーションを与える、多くのものの長所をすくい上げ、調和させる。そんな折衷主義の思想は、様々な波を越え、いまを迎える“花の都パリ”に似ている気がするのだ。