イザベル マラン(ISABEL MARANT)が発表した、2015年秋冬コレクション。
モダン・ジプシー。イザベルは今季のコレクションを、そう形容する。かつて移動民族として世界をさすらってきたジプシーのスタイルを、モードな世界観で表現したら。今季はまさに、そんなイメージを反映させたコレクションだと言えるだろう。そしてそこには、大きく分けて3つのキーが含まれていた。
その中でも今季最も特徴的だと言えるのは、海軍のユニフォームにインスピレーションを受けているところだ。一見して分かるのは、ニットを中心にあしらわれた、マリンスタイルの定番・ボーダー柄。さらにディテールに目を向けると、ニットやスカート、ブーツにまで、セーラーボタンがポイントとして使用されていることが分かる。そしてアウターの肩についたエポレット。これもまた、制服のディテールを取り入れたものだ。
それから70年代ロックシーンのムードも強調されている。70年代と言えば、デヴィッド・ボウイやジミー・ヘンドリックスが活躍した時代。彼らが好んだファッションの残り香は、アイテムのシルエット、特にタイトなトップスやハイウエストパンツへと受け継がれた。さらにオーガンザをはじめとするセクシーな素材遣い、ロックなレオパード柄もまた、ステージの熱気やパフォーマンスのイメージを運んでくるようだ。かつて衣装のディテールとして多用されたフリルは、拡大され、スカートやドレスなどのスイートなアイテムとして。
そして3つ目は、イザベルらしいとも言える、エスニックなデザイン。イカット柄や、ハンドクラフト感のある刺繍もある中で、特に民族的なカラフルな色彩は目を惹いた。
マリンとロック、エスニック。今季のコレクションは、全くかけ離れているようなこうした要素を積極的に取り入れることで、ひとつの流れを作り上げた。そしてそれは、エッジィにもフォーマルにもなりすぎない、独自のバランスとして、ランウェイ上にあらわれていた。