ファセッタズム(FACETASM)は、新進デザイナーをサポートするジョルジオ・アルマーニの支援を受け、2016年春夏コレクションをイタリアミラノの「アルマーニ テアトロ」で発表した。テーマは「Ambiguous daze in my ambiguous days(曖昧な自己探求)」。「自己という極私的なイメージを想像させる言葉とそれに相反する曖昧といった言葉との組み合わせから生まれる違和感と矛盾、大きな自然の中でたった一つの場面を切り取ったようなおかしさを表現した」のだという。
ジョルジオ・アルマーニ側から話があってから今日までの時間は、わずかひと月。「とくにミラノだからといって特別なことはせず、いつも通りに作った」と落合は話すが、完成度は非常に高く、かついつもより大人っぽい印象を受けるものだった。東京ストリートという軸はぶらさずに。
全体的にはトップスをビッグサイズでまとめ、下半身はシンプルなラインに徹している。代表的なルックは、やや肩の落ちたMA-1やバーシティジャケット、半袖のフレンチスリーブのスウェットシャツに、ひざ上丈のショートパンツ、クリースなしのワイドパンツを合わせたスタイル。ショートパンツにアシンメトリーなスカートを重ねたようなボトムも目を惹く。
レイヤードはいつもより控え目だが、らしさを感じさせる攻めたアイテムも散見する。テーラードジャケットの片方のラペルにライダースジャケットの襟をドッキングさせた表現は、落合ならではの強引で楽しい1着。プルオーバーのトレンチコートやシューレースを肩に編み込んだようなシャツもこの人にしか作れないものだ。
スポーティなラインソックスに合わせた靴は、甲の部分をシンプルに覆うサンダルと、デッキシューズのデザインを融合させたローファー。サンダルはいつも通りのストリートの感じだが、正統派のレザーシューズを作ったのは初めてではないだろうか? 複数のものを組み合わせる「ハイブリッド」は落合の十八番だが、革靴でもそれは徹底されており、なおかつ全体を大人っぽくまとめる役割を果たしている。
カラーパレットはブルー、グリーン、ホワイト、ブラック、ブラウンが主体で、オレンジ、蛍光のピンクやイエローを印象的に挿している。素材はサマーウール、ジャカード、ナイロン、コットンなどを使用した。
ミラノ・メンズ・コレクションを通してみても、そのクリエーションは十分すぎるくらい通用している。大人っぽく進化したファセッタズムに、今後の世界的な飛躍を感じたのは自分だけではないだろう。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)