オマージュラインは、“頭の中にある既存のイメージをつかって遊ぶ”という頭の中にあった実験的な試みの1つです。家内制手工業と呼ばれるような、町の工場の人達に作業をお願いすると、それぞれ異なるアウトプットが出てきます。
例えば、3つの工場に頼むと3つ異なるものが出来上がってくることを経験で知っていました。だから、頭の中にある工業製品のイメージを、手工業の方々に作ってもらうと異なるものが生まれてくると思っていました。表層的なデザインではなく、過程や考え方をデザインしまたんです。
そうです、比較的有名で、頭にパッと浮かぶイメージを対象に行うことに意味があります。工業製品が駄目で、手工業が良いと言いたい訳ではありません。工業製品は大量生産ができ、リーズナブルな価格で多くのお客さんに提供できる。手工業は手工業で、工業製品より値段は高いけど、工業製品ではできないことを表現したかったのです。
優劣ではなく、オマージュラインを見たときに、モノの先にある事象を想像出来る余白を与えられることができれば理想的。
このプロダクトには自分がつくる他のプロダクトよりも多く余白があると考えています。この余白がすごく重要で、受け手がこの余白を思考して埋めていくことに意味があります。
また、よく聞かれることなのですが、既存のイメージを使用することにはリスクがあります。しかし、このグレーゾーンを守ることで表現をさらに広げたり深めたりすることが出来ると考えています。仮に何か問題が起きることがあればそれを含めて様々な角度で問題提議できれば、プロダクトとしては筋が通ると思います。
左)エンダースキーマ 2015年秋冬コレクションより
右)2015年春夏コレクションより
製作そのものと、温度感でしょうか。スニーカーのように見えますが、作りは革靴。革靴と同じようにオールソールなどの修理もできます。スニーカーはゴムと熱がキーワードで、木型や底付けという革靴の作り方とは異なります。
新しい試みだったので、職人さんと世界観を共有するのに特に気を使いました。職人さんは分業制。自分が思い描いているものを形にするために、1人1人に伝えなければなりません。職人さんと一緒に、技術的に製作可能なことを確認していくのは、チャレンジ。もちろん、ファッションとしてディテールにもこだわりましたし、飾り物ではないので、履き心地も追求しました。
また、温度感にも気を使いました。ある程度無機質に見えるような靴にしたかった。ヌメ革自体が割と暖かいので、ほっこりとした雰囲気にならないよう、バランスをとるのに気を使いました。
スニーカーは、時間がたつと履き捨てる側面がどうしてもあるので、その逆の、履いて育てていくという要素を加えました。革靴なのでオールソール(靴底の総張替え)もできます。
エンダースキーマは製品が完成形ではなく、使い続けてその人の完成品に育ててもらうのを理想としています。ヌメは色が変わっていくので、目に見える変化を感じ易い分かりやすさがありますね。
ヌメ革は加工する前の革なので、扱いが難しい。製作するときは手袋をはめないといけないし、機械に使う油が移らないよう、ミシンをかける時にも気を使いました。履く人も気を使うことが多いかもしれませんが、長く付き合ってもらいたいですね。
エンダースキーマ 2014年秋冬コレクションより
2015AWコレクションでも継続展開
試行錯誤の繰り返しですが、技術の可能性を感じています。オパンケやマッケイと呼ばれる靴の製法をいくつか混ぜながら作っています。
工業製品の対局はビスポーク、工芸品ですが、オマージュラインは工業品と工芸品の中間。ある程度の量を流通させることができるので嬉しい。大量生産で、誰もが手に取れるのも魅力ですし、1ヶ月かけて1足を作りあげる美しさも魅力です。エンダースキーマとしては、その真ん中を進んでいます。
いえ、始めた時は10足満たない程度のオーダーでした。毎シーズン1つずつ新しい型を増やしていくという決め事をして続けています。初期に考えたコセンプトを守り通してきて良かったと思っています。