ヴァレンティノ(VALENTINO)が2015-16年秋冬オートクチュールコレクションを発表した。
デザイナーのマリア・グラツィア・キウリと ピエールパオロ・ピッチョーリが今季インスパイアされたのが、イタリアの首都・ローマ。ヴァレンティノが言わずと知れたローマ発のブランドだけに、今季は原点回帰のコレクションかと思わせたが、実際にショーで表現されたのは、そこから時をさらに遡った、古代の世界観だった。「フォロ・ロマーノ」。古代ローマの中心地として、かつて政治・経済の中核を担ったこの場所こそが、今季のインスピレーション源だ。
厳粛さと豪華さ。一見対立する、この2つの要素を兼ね備えているのが、今シーズンの大きな特徴かもしれない。古代ローマで着用されていたというトーガやケープをイメージソースに置きながら、ユニークなアレッサンドロ・ガッジオ(Alessandro Gaggio)のアクセサリーや大胆なカッティング、そして時には豪華絢爛な刺繍で魅せる。ショーではそうしたドレスルックの連続の中で、見る者を次第に、ファンタジーでもありモダンな、独自の世界観にひき込んでいく。
前半はブラックを基調とした、しめやかさのあるルックが中心だった。まるで黒鳥が羽を広げたようなファーストルックのドレスにはじまり、祭服を思わせるようなゆったりとしたシルエットのドレスなどが続いていく。しかしオーガンザなどの素材により肌の露出を調節することで、禁欲的なムードを中和。オートクチュールならではの、繊細な印象を加えている。
するとショーの中盤を過ぎたあたりから、柄や鮮烈なカラーが登場するようになった。まずはそれまでの禁欲的でもあり大胆でもあるデザインを踏襲しながら繰り出される、覚めるような赤のルック。続いて控えめな色合いを組み合わせて生み出される幾何学模様のドレスにコート、豪華な刺繍が彩るドレスと流れ、全面的にゴールドが輝くゴージャスなスタイルへ。ラストはベルベット素材のドレスで締めくくられ、最後までエレガントな余韻を残していった。