スズキ タカユキ(suzuki takayuki)が、2016年春夏コレクションを発表。テーマにしたのは、穏やかな霧で覆われた白く霞がかった世界。スズキは今回のコレクションの中で、霧によって視界が遮られた不安感ではなく、その世界に包まれたときになぜか感じる「心地いい安心感」を表現した。
ブラウスやワンピース、カットソーそれぞれに、肌触りや質感にこだわった素材を使用。例えば、コットンといってもバリエーション豊かに、少しオイル含有量の多いシルクのようなもの、綿密に織られパリッとしたもの、緩く織られた柔らかなもの…全く違う素材かのような質感で、優しく肌に馴染んでいる。
また、今期はたっぷり生地を使った分量感あるデザインが目立つ。ブラウスの袖やワンピースの裾、至るところに施されたギャザーやダーツは素材に動きをつけ、軽やかなシルエットをもたらす。そして、シワ加工を施したマテリアルによってふんわり空気が取り込まれ、体を優しく包み込んでいるよう。デザインのひとつひとつが、つかみどころのない霧の儚さを想起させる。
それらの表情豊かなワードローブを身に纏うのは、少し不気味な雰囲気のモデル。霧の中に迷い込み、体温を失ってしまったかのような彼らが、むしろその柔らかな素材や繊細なディテールを誇張する。
毎シーズンのごとく提案される着れば着るほど味が出るワードローブは今期も同様。ジャケットやコートは、施されたダーツやシワ加工によって使うほど自分の体に馴染み、シャツやパンツは、着る度に麻やリネンの素材が生み出す独特の世界観を広げていく。時間の経過さえもデザインのひとつとして取り込む、スズキのこだわりが光るコレクションだ。