ウィザード(wizzard)が2016年春夏コレクションを発表した。テーマは「NOISE AND NOISE」。
音楽からインスピレーションを受け、毎シーズンのコレクションを製作するウィザード。今季イメージしたのは、アイルランド・ダブリンのシューゲイザーバンド「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)」が奏でる音だ。ノイズが混じった轟音サウンドで知られるマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの音楽性を、デザイナーの佐藤はシンプルなロックスタイルで表現した。
ゆるいシルエットのトップスにタイトなパンツを合わせ、足元はキャンバススニーカー。服のポイントとなるグラフィックは、フォントが主役のミニマルなものだけ。そんな80年代オルタナティブロックのミュージシャンのようなスタイルが、今シーズンのコレクションの骨格をなしている。イメージソースとなったマイ・ブラッディ・ヴァレンタインも80年代から活躍していたバンドであり、こうしたスタイルの系譜にも当たるわけだが、ウィザードが表現したかったことはそれだけではなかった。取り組んだのは、さらに深い「音の特徴を服に落とし込む」という課題だったのだ。
とはいっても、音の特徴とは一体何だろうか。ひとつに、ノイズが混じった轟音サウンドによる「歪み」が挙げられる。そして「歪み」を具象化するために用いられたのが、ドレープだ。多くのトップスには、大きくシルエットにゆとりが持たせられており、そこにドレープが生まれ、歪みが表現される。またボーダー柄のラインを曲げたり、カットソーの裾をアシンメトリーにデザインしていることも、分かりやすい「歪み」「ノイズ」のイメージを具現化したものだ。
そしてもう1つの音楽的特徴が「重なり」だと考えられる。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの楽曲は、複数のギターの音色が重ねられているものが多いのだが、こうした「重なり」はレイヤードによって表現されたのだろう。カットソーにジャケットといった定番のレイヤードは当然のことながら、ワイドシルエットのカットソーにはインナーに更なるカットソーを。さらにショートパンツにタイトなレギンスをドッキングし、1つのアイテムとして重なりを表現するなど、最小限のアイテムで奥行きのあるスタイルを構築していった。