イギリス人R&Bシンガー、エイミー・ワインハウスとフランス人女優デルフィーヌ・セイリグのミックスによる60年代のジャズ音楽に合わせてスタートしたジャンポール・ゴルチエの2011-12年秋冬。タイトルは「Bourgeoise sans age」(永遠のブルジョアジー)。歳を重ねた貴婦人達が持つ、洗練された気品に裏打ちされた美しさを称えたコレクション。
フランス女優、ヴァレリー・ルメルシェがキャットウォークの上で傘をを放り投げ、彼女に続いて登場したモデル達も皆スカーフやバッグ、ジャケットを次々と脱ぎ捨てていく。奔放で自由、自信に満ちた笑顔で颯爽と歩く彼女達のヘアスタイルは白髪を60年代のビーハイブ(蜂の巣のようにふくらませたアップスタイル)風。キトンヒール(低めの細いヒール)のパンプスや、タートルネックニット、マニッシュなパンツ、ラメリブニットのカーディガン、ボウタイブラウス等、60年代の雰囲気をフラッシュバックさせるアイテムも随所に登場した。アラン ミクリとのコラボレーションのサングラスもレトロでユニークなデザイン。
今季ポイントは、ラグジュアリーな素材使いとモダンな柄使い、そこにクラシカルな美しいシルエットが加わる。トラディッショナルなタータンチェックのジャケットはベルベッド素材で、ジャンプスーツも黒のシルクでイブニングドレスに負けない華やかさを放つ。マニッシュなピンストライプのトレンチコートはトロンプルイユ(だまし絵)の仕掛けが隠され、その下から現れるのはレディライクなひざ丈スカートにシルクのブラウス、そしてワンピース。ネオンイエローのサテンブラウスに金襴緞子風の鮮やかな刺繍が散りばめられたパンツを合わせたり、ネオングリーンのブラウスにミッドナイトブルーを合わせたりと、鮮やかなカラーがぶつかり合うスタイルは目映いばかり。ゴルチエのショーの常連となった美しいメンズモデルアンドレイ・ペジック(Andref Pejic)はファーが贅沢にあしらわれたダウンジャケットを纏って登場。女性よりも美しい少年がゴルチエによってゴージャスなマダムに変身した。
アンファン・テリブル(恐るべき若き天才)としてのデビュー以来パリに愛されてきたゴルチエだからこそ表現できる、パリのブルジョアジーの心意気。フィナーレの最後にはヴァレリー・ルメルシェが再登場し、ゴルチエと抱き合って新しいコレクションの成功を祝福した。