ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)は2016-17年秋冬コレクションを、フランス・パリで発表した。
最初に現れたのは“黒のビバンダム”のような男。ヒマラヤ登山用のダウンジャケット並にボリューミーな中綿コートとマフラーの上から、なぜか胴着のようにストレッチ生地のカットソーを重ねている。パンツはワイドシルエットのカーゴパンツでクロップド丈。足元にはジョッパードブーツを合わせている。この大きな上半身は、コレクションの前半と後半のキーアイテムで、肌着であるカットソーを上着の上に重ねることで、自らの肉体を大きく見せる意図が感じられる。ざっくり編まれたローゲージのロングカーディガンやハイネックセーターもそれに近い存在である。
中盤に入るとヨウジらしいオールブラックのルックが行進する。コートやジャケットに刺繍された一筆書きのイラストは、女優の宮沢りえの手によるもの。スーツにはパラシュートベルトが身体中に巻かれていて、コラボレーションモデルとして披露された、ジッパーで開閉できるドクターマーチン(Dr.Martens)の8ホールブーツとともに、パンキッシュな匂いを感じさせる。
ヨウジにしては珍しく、アメリカン・ヴィンテージを連想させるアイテムもちりばめられているのも特徴のひとつ。片方のサスペンダーが膝に絡まっているようなワンウォッシュのデニムは、50年代のリーバイス501的な太めのシルエットで、裾は無造作に長めに折り返している。スタンドカラーとフード型のレザージャケットは、分厚い革により中国語で「我将告诉每一个人 (I will spread it to each of them.) 」と書かれている。ラストには「Let me eat you」「Help me, I’m hot」などのメッセージとイラストが描かれたピースが登場した。
フィナーレでは、ベン・E・キングの「Stand By Me」が木霊する。この歌の歌詞に込められた「ずっと近くにいてほしい」という思いは、山本耀司なりのフランスに対する愛情表現なのだと思う。