コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME des GARÇONS JUNYA WATANABE MAN)は、2016-17年秋冬コレクションを、フランス・パリで発表した。テーマは「外(そと)」。アウトドアウェアとは違う、スマートフォン時代に対応した新しい洋服のかたちを提案している。
2ルック目のベーシックな型のステンカラーコートは、コートの下部に長方形の透明の窓がある。中盤のワックス加工を施した、ダブルブレストコートにも同様の小さな窓が仕掛けられている。先端からコードが伸びているのが気になるが、なにかはぎれの生地やバンダナを入れて表情の違いを楽しむためのものだと最初は思った。後半のクラシックなポロコートの背面には、B5サイズほどの同様の窓がどんと鎮座している。そしてやはり、肩や胸元からコードが顔を出している。
種明かしをしよう。この窓はソーラーパネル型の蓄電器なのである。ビッグサイズの窓は、なんと4時間でiPhoneを充電する能力を備えており、小さいほうも十分実用に足るという。外で太陽に当たれば自然に充電し、夜にスマホの電池が切れたら充電すればいいわけだ。
外での機能は他にも充実している。まるでバッグを磁石で引き寄せたようなジャケットは、フロントだけで大小5つのポケットが付く。これならバッグなしで外出できそうだ。シングル3つボタンのボックスシルエットのスーツには、カジュアルな質感のボンディング素材を使用。外見はクラシックなアイテムも、内側には機能素材を配していて、外で着ることを考慮した仕様になっている。
コラボレーションの目玉は、1879年創業のドイツの老舗シューズブランド「ハインリッヒ・ディンケラッカー」のプレーントゥ。黒の表革は通常ライン(インナーにダブルネームの表記は入る)で、茶色のシボ革はブランド独自の別注商品となる。トリッカーズとはブローグが大きめなウィングチップを製作。ニューバランスのスニーカーはコラボレーションではなく通常の商品だ。リーバイスとは、ヌバックのGジャン、膝や尻に赤や青のレザーを配したジーンズを作った。ジーンズはクロップド丈で長めに折り返して穿く着こなしを提案している。
インビテーションには鉄腕アトムが描かれていたが、ショーには何も登場しなかった。アトムに描かれた未来の世界が今、ということなのだろう。渡辺は、洋服の世界で技術の先頭を走っている。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)