ケンゾー(KENZO)の2016-17年秋冬ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク8日目の2016年3月8日(火)に発表された。
今シーズンも、メンズコレクション同様に、インスピレーションの矛先は日本に向かっている。テーマは、自由気ままな冒険心と探究心。ブランドのDNAを頼りに、未来へ向けて歩みゆくケンゾーウーマンが見つけたクリエーションの中には、わが国を代表するアニメーション“セーラームーン”の要素が詰まっていた。
セーラー戦士たち同様に、ウエストは、高めの位置に設定したエンパイアラインが主流。また、セーラーカラー(襟)がジャケットを彩り“制服”スタイルを彷彿とさせる。
しかし、アニメ文化を率直に描くのではなく、上品にエッセンスを抽出するのがケンゾー流で、例えば、アームを長くする一方でボディはクロップド丈に設定したり、タイトなものにワイドなものを掛け合たり…と、シルエットにコントラストを付けて、キャラクターの存在をほんのり香らせるのだ。
一方で、高田賢三が手掛けたアーカイブからの影響は随所に散りばめられている。タンポポやアイリスといったフラワーたちは、ビーズ刺繍やプリントになってコートやドレスにのせて。また、タイガー模様は装いの全面に現れ、サイケデリックな要素も加える。
ダッフルコートも今季の鍵を握り、ボタン部分“トグル”のディテールはブラウスなどの胸元に添えられている。格子状に加工したスモッキングのエレメンツは、袖口に添えられ、ふんわりとした曲線がフェミニティを強調する。
背景を知らなければ、日本のアニメ文化が着想になっていたとは思えない。日本人デザイナーが異郷のパリでファッションをスタートさせ、現在はアメリカンカルチャーで育った2人のクリエイティブ・ディレクターが製作を支える、ケンゾー。こういったモダンでフレキシブルなアティチュードが、異文化の垣根を取っ払い、典麗なモチーフの描き方に影響を与えているのかもしれない。