ミラノファッションウィークで発表されたETRO(エトロ)の2012年春夏コレクションのテーマは、「THE NEW JAZZ AGE」。ジャズ・エイジとは、アメリカの1920年代の文化や世相を表した言葉。第一次世界大戦の終結後のジャズの流行、そして社会進出をしていく女性たちがバストやウェストを強調しないゆったりとした動きやすいシルエットの女性視点のファッションを生み出したこの時代。今回のコレクションは、無駄をそぎ落としたミニマムなスタイリングを中心としながらも、全体にそうしたアメリカのジャズ・エイジのモダンなムードをさりげなくちりばめ、シンプルなシルエットやプリントで表現した。
カラーパレットは、アプリコットやミント、レモンなどのシャーベットカラーに、ライムグリーンやポピーオレンジといったポップカラーをミックス。黒の縁取りが甘さを抑え、艶めく女性らしさを強調している。また今シーズンはイタリアの未来派アーティスト、フォルトゥナート・デペーロの作品に影響を受け、エトロのシグネチャープリントもシンプルに変化。おなじみのペイズリー柄を分解し、再構成したコラージュ作品のような印象のものや、エキゾチックな幾何学模様が用いられ、ジャズエイジのイメージを再現している。
ドロップウエストや、ウエストマークのないストレートなシルエットがメイン。素材は、シルクやサテン、ビロード、クレープなどの柔らかいものが多用された。カーブをつけた裾の縁からは、シルキーなプリントを施したプリーツが顔をのぞかせる。ドレスの裾を細長くスライスしてあしらわれたフリンジは、ダンスのようにリズミカル。
コンパクトなベリーショートパンツにシルクのプリントシャツや着物風コート、タキシードジャケットを合わせたコーディネートが印象的。アールデコ調のプリント柄をブラックで引き締め、常識にとらわれず自由を謳歌するジャズエイジの女性像が現代に甦った。また、キク科の花・アルニカをジグザグに描いたプリントや幾何学模様を描いたシガレットケース型のフレームバック、大ぶりの石を使ったトライバル風イヤリングなどアクセサリーが、スタイリングをシャープに仕上げている。
現代女性の強さと優しさを豊かな感性で表現したエレガントなコレクション。