2011年10月22日、アンリアレイジ(ANREALAGE)が春夏コレクションを発表した。テーマは「SHELL」 ショーの開始を告げたのは鈴の音。空洞があるからこそ奏でられるそのシンプルな音色は、今回のコレクションを象徴している。
テーマについて、デザイナーの森永邦彦氏は洋服の歴史から語り始めた。それは人間の体という立体を、平面である布でどう包むのかを追求する歴史だが、 、今回注目したのは、 歯ブラシや乾電池、おもちゃなど様々な立体物の包装に使われるブリスターパックという手法。どんな立体にも合わせて形作ることができるこの手法で服を作ったらどうなるか。その答えがこのコレクションだ。
真っ白のドレスには、体そのものや、服を着たままの体のシルエットが、そのまま身体から数センチだけ浮き上がっている。このフォルムは、ブリスターパックの工場に持ち込んだ布地を熱と真空技術でモールドさせ、中に空洞を作り出した。ポリエステルのシフォンは、熱で繊維が溶けてそして固まった時に、新しいフォルムと共に光沢のある質感までが生まれてくる。 サテンは収縮させることで膨らみを作り出し、ニットのような模様が表れてきた。 空気を入れて膨らませてフォルムを作り出した前回とは同じアプローチだが、逆の手法を使ったことになる。
中身の方が大切にされ、 用がなくなればすぐ捨てられてしまうけど必要なものの象徴であるブリスターパックに美を見出して、命を吹き込みたかった。それに、何が中身で外側なのか、中と外との境界線も描きたかった、と森永氏は語る。そして彼は誰もやったことがない方法で服を作った。
だが、無機質で、色のない殻の服は人間の体のバランスそのものも変えてしまう。そして、身体とその抜け殻である服の間にできる新しい空間。この空っぽのポケットの中には何をつめるべきなのだろうと、そんなわくわく感が、見たこともない服を着てみたい服に変えるのは不思議な経験だ。
突然照明が消え、辺りは真っ暗で静まり返った。誰かから拍手が始まり、デザイナーの登場でショーが終わったことを知るまでの数秒間。その時空間はまるでショーの抜け殻のよう。脱ぎ捨てられた後もかたちが残り続ける殻のように、何もないはずのそこにも何かが残っていた。