ディオール(Dior)の2018年リゾートコレクションが、アメリカ・ロサンゼルスで発表された。
東京・銀座での2017年春夏オートクチュールショーが記憶に新しい、マリア・グラツィア・キウリ率いる新生ディオール。日本で桜の季節を終える頃には、ファッション界にはリゾートコレクションのシーズンが訪れる。マリアにとって初のリゾートコレクションは、アメリカ・ロサンゼルスが舞台。荒野に大きな気球を飛ばし、自身の初挑戦を祝福。乾いた草木が広がるブラウンカラーの大地は、マリアの新しい一歩をどう受け止めたのか。
インスピレーションとなったのは、1951年クリスチャン・ディオールによって生み出された”オーバルライン”にプリント柄のスタイルだ。一大ムーブメントとなったアイコンシルエットのルーツを辿るところからのスタートとなる。
ムッシュがヒントを求めたのは、”オーバルライン”の誕生から10年余り前に発見された、ラスコーの洞窟だった。ジョルジュ・バタイユが「人類の夜明け」と称したその洞窟からは、力強く描かれた鹿、馬、牛などの動物たちが見つかり、人間と自然の関係性、芸術への探求心をくすぐった。ムッシュはこれを受け、先史時代の小像・ヴィレンドルフのヴィーナスのように柔らかい、女性の身体の形を捉えた”オーバルライン”を世に送り出す。
こうした観点は、マリアの手に渡り現代的なラインとして蘇る。メゾンの軌跡から学んだ、膨らみや丸み、Aラインスカートを重ねたボリューム感など、オリジナル要素はそのままに。オリジナリティを加えたのは、スポーツのエッセンスとポエティカルなモチーフの描き方だ。
狼や先史時代の動物たちは、黒と黄金のようなオークルではっきりと映し出した。デビューから一貫して創り出しているシースルーのドレスには、動植物を褪せた色で描き少し野性的に切り取る。アースカラーのスパンコールを寄せ集め、美しい刺繍にして女性の手形の形に。プロポーションや長さには手を加え、クロスボディバッグやスニーカーブーツの登場が、モダンなアレンジを視覚的に伝達する。総数84体にも及ぶルックを通して、マリアが再びヘリテージの奇跡を現代へと呼び戻している。