ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)の2012-13年秋冬コレクションがパリファッションウィークにて発表された。テーマは「Insider Outsider」。急速に発展するネットワークの世界で、多様な文化、人種、言語、世代の境界線が不透明になっていき、同じ価値観を共有できる現代。そのような時代でも独自の感性を貫き自己を表現する人々、「Outsider」がいる。そんな「Outsider」たちの表側、そして内側のアイデンティティを表現した。
アメリカのミリタリーユニフォームやジャケット、トラディッショナルなウェア類を基本とし、一見ベーシックでシンプルな印象。しかしそのジャケットやコート、ブルゾンなどのアウターには、別のアウターを裏地として使用し、その内側に組み合わせることでリバーシブルとなっている。そして、ネイビーのPコートの袖が折り返されると、そこには美しい伝統的な刺繍が現れる。それはかつて、海軍の士官たちが制服の内側に、自分らしさを主張したいという思いから施した刺繍のよう。表側は制服でも、内側は自由だというメッセージになっている。そしてストライプ柄のジャケットは、ミハラヤスヒロの象徴でもあるフォトジャカードと呼ばれるファブリック使いにより、グラデーションになっている。こうしてシャープでシンプルな表面から、内面の個性を引き出している。
今回のコレクションでは、京都の老舗織屋、細尾社の協力のもと、伝統の西陣織が用いられている。千数百年の歴史を持つこの織屋では、熟練の職人が丹誠を込めて艶やかで美しい文様の生地が織り続けられている。もともと帯と着物をメインとして作っていたが、今季のミハラヤスヒロとのコラボレーションにより、初の洋服生地として使用された。本物の金の織糸が織り込まれたカモフラージュ柄のスーツは、軍隊を意味するものとは逆に、大切なものという平和の象徴となった。
また、ミハラヤスヒロの原点となるシューズもユニフォームに合わせられるようにストイックな印象。しかし、定番の「あぶり出し」技術や、ソールの多彩な色使い、鏡面磨きされた爪先など、シューズの独特で大胆なディテールによって、内側に秘められた自我の表情をドラマチックに表している。
ショーでは、サムライギタリストとして世界的に注目されているアーティストのMIYAVI-雅-が、力強いアコースティックギターの生演奏でコレクションをより一層美しいものへと引き立てた。細尾社の伝統的で精巧な西陣織と、MIYAVIの現代的でパワフルな音色。伝統と現代、そして繊細さと大胆さといった両面を備えた「Outsider」は時代を超えそして未来へと、強い自己表現をしているコレクションとなった。