グッチ(GUCCI)の2019年リゾートコレクションが発表された。
これまでロンドンのウェストミンスター寺院の回廊、フィレンツェにあるピッティ宮殿のパラティーナ美術館など、文化的ロケーションで開催されてきたグッチのショー。今季はフランス・アルル市に位置する最も有名なローマ古墳のひとつ、アリスカンの遺跡にそのランウェイは現れた。ユネスコの世界遺産にも指定されているアリスカンの遺跡でのイベント開催は歴史上、初めてとなる。
アリスカン遺跡は、4世紀頃からの高貴なローマ人たちが眠る場所。苔むす古代の墓石が並ぶこの遺跡に、キャンドルライトが灯され、また会場はスモークに包まれ幻想的な雰囲気に。真っ暗な会場の中でランウェイに炎が走ると、ショーは幕を開けた。
序盤に登場した淡いピンクのジャンパー&スカートにグリーンのタイツを合わせたルックや、セーラーカラーのブラックドレスは、アレッサンドロ・ミケーレがこれまでに築き上げてきたノスタルジックなムードに沿うものではあるのだが、何かが違う。そこには必ず黒い十字架が存在するのだ。チョーカー、イヤリング、ネックレス...様々なアクセサリーとして取り入れられた十字架は今シーズンのシンボリックなモチーフと言ってよいだろう。
多くのルックが脇に抱えたクラッチバッグは、どこか聖職者が携える聖書のようにも感じられる。祭服を彷彿とさせる黒いドレスに、大胆にも骨のモチーフを落とし込んだピースも登場し、墓石の並ぶアリスカン遺跡を舞台としたミケーレの折衷主義的世界観は加速していく。
プリーツスカートやジャケット、ガウン、ドレスには鮮やかな花々が。花鳥風月もミケーレの象徴的な表現ではあるが、他シーズンと比較しても目を惹くのは、花束が古代の墳墓のシンボルであることも多分に関係しているのだろう。遺跡に眠る者たちを弔うためのものだろうか、モデルたちが持つ色とりどりの花束も、ミケーレが生み出す世界に欠かせない要素の1つとして存在している。