ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2019年春夏メンズコレクションが、2018年6月21日(木)にフランス・パリで発表された。今季は、ヴェルナー・パントン(Verner Panton)が残した作品とのコラボレーションによって生まれた。
ヴェルナー・パントンは、デンマークの建築家・デザイナー。彼の作品は、家具としての機能性はもちろん、試行錯誤の上生まれた革新的なフォルムが特徴で、世界の人を魅了してきた。そして数ある作品の中でも、最も有名なのはS字型の椅子「パントン・チェア」。世界初のプラスチック一体型成形である「パントン・チェア」は、誕生した1960年代当時、相当な技術が必要であったと言われる革新的作品だった。
今季は、そんな革新的アートを世に送り出してきたパントンの家族の了承を得て、彼のデザインの比率や配色を作り変え、ドリス ヴァン ノッテンのコレクションに落とし込んだ。
パントン初期のカラフルな作品に見られる色の美学と、ドリス ヴァン ノッテンの色の美学が掛け合わさる今シーズン。色が鮮やかな分、今季はドリス ヴァン ノッテンの真骨頂であるビジューの装飾やボタニカルな模様はほとんどない。その代わり登場したのは、パントン独特の有機的な曲線が蘇るような、数々の色の層からなる波模様だった。
虹色の波模様から始まり、ブルー、グリーン、イエロー、ブラウン、ネイビー、オレンジ、そしてレッドと、色の世界はランウェイの中で幾度となく、色の明暗も踏まえてグラデーションが変わっていく。こうして色が溢れていても、そこはかとなく感じられるドリス ヴァン ノッテンならではの奥ゆかしさは、ほのかに混ざり合うくすんだ色味を交えていることが理由だろう。
波模様自体もかすかなグラデーションを刻むものから明瞭に色を分けているものまで、それぞれの色の組み合わせ方や特性を見極めて変化させている。例えば、アースカラーのグラデーションは地層みたいに壮大だし、オレンジのグラデーションは太陽の光みたいに温かい。さらに、大きくクローズアップしたり縮小したり、波模様はテキスタイルの上で大小自由気ままに変化している。
この楽しいパレットは、ワークウエアをベースに、ごくミニマルなテーラリングやスポーツアイテムを織り交ぜて構成している。ほんのり色褪せたユーズド感溢れるステンカラーコートやチェスターコート、工業繊維のような光沢ナイロンからできたスポーツパーカ、クロップド丈のオールインワンなど、どれをとっても前述したように装飾がなく、ワークウエアでもエレガントさが光る。
足元はカジュアルなスポーツサンダルもあれば、重厚なレザーブーツもある。それらにも色の美学が浸透していて、開襟シャツやスウィムウエアなどには、色のコントラストが遊べるダブルベルトサンダルをあわせて、色遊びに爽快感を。一方で、今季の象徴的なスタイリングのひとつであるロングコートとクロップド丈のパンツの装いには、カラフルなデザートブーツやカラーベルト付きのドレスシューズを合わせている。