3.1 フィリップリム(3.1 phillipLim)の2012-13年秋冬コレクションのテーマは「光と影」。影をどう描き、そしてどう効果的に配置するかという探求心が、服そのものの形を錯覚させるような感覚を作りだした。人間が生まれながらに持つ弱さと、それに相反する強さのイメージを持つ、ネオノワール映画やコミックのヒロインを思い起こさせる。
カラーパレットは、ホワイトとブラックがベース。スカイブルーやオレンジといったアクセントカラーや、暗く影の付いた青みがかった緑や濃い紫といったさまざまな色彩が、ネオノワール映画のコントラストの強いライティングのように、さらに陰影を強く印象づける。そして色彩だけではなく、ステッチやダーツのディティール、生地を重ね合わせて生み出したグラフィックが、シャープなシルエットを美しく描き出した。
今季注目のアイテムは、ミニマムなデザインが凛とした女性像を浮かび上がらせるケープ風ジャケット。あえて袖に腕を通さず着こなすことで、フォーマル過ぎないセクシャリティを醸し出している。メインモチーフの千鳥格子柄は、プリントや着古したような加工として、または断続的な刺繍として表現。コンサバティブな印象を超えて、モダンなイメージだ。またスカーフやタートルネックの上から着用した付け衿や、腰に巻き込んで垂らしたースルーのベルトなど、ウェストラインや首元を引き立てる小物使いも見逃せない。
色、素材、テーラリング。その全てで表現された図形と、それをとりまく空間という相対的な関係が、着る人の存在自体を特別なものへと浮かび上がらせるコレクション。