ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)の新クリエイティブディレクターに、ニコラ・グラスが就任。彼女にインタビューを実施すると、就任までの道のりや、デビューとなった2019年春夏コレクションのこだわりについて話を聞くことができた。
ケイト・スペードのクリエイティブディレクターに就任するまでの経歴を教えて下さい。
グッチ(GUCCI)でアクセサリーデザイナーとしてジュエリーとハンドバッグを担当し、その後マイケル・コース(MICHAEL KORS)で13年間ハンドバッグ部門のトップとしてレディース、メンズ、セカンドラインの全てのアクセサリーの統括をしてきました。
グッチやマイケル・コースでは、どのようなことを学びましたか。
”プロダクトの良さが全てを決める”ということを、当時グッチのクリエイティブディレクターだったトム・フォード、そしてマイケル・コースから学びました。売れるものを作るのではなく、デザイナーとして”本当に良い商品を作る”ということです。例えばハンドバッグというものには、その中に機能性とクオリティー、そしてそれ1つでブランドを語ってしまうような強い存在感が必要である、というようなことです。
それから、クリエイティブディレクターとして明確なビジョンを持ち、その強い意志を貫くということも、彼らから学んだことの1つです。
ケイト・スペードからクリエイティブディレクターのオファーを受けたときはどんな気持ちでしたか。
一言で言えば運命ですね。実は、私がハンドバッグデザイナーになったきっかけを与えてくれたのは創業者のケイトとアンディでした。25年ほど前、私はジュエリーのデザインを学んでいて、エディンバーグアート大学でジュエリーデザインの学士を、その後ロンドンのロイヤルカレッジオブアートでファッションアクセサリーの修士を取得していました。
その頃に、彼ら(ケイト・アンディ)がほとんど自分たちの手だけでハンドバックブランドを立ち上げたことを記事で知り、すごく興味を持ったことを覚えています。それがきっかけの一つになり、私はジュエリーデザイナーからバックデザイナーになろうと転身を決めました。なので、25年後、自分がクリエイティブディレクターになるなんて、本当に運命を感じました。
クリエイティブディレクターを引き受けようと決めた理由も、ブランドのファンであったことが影響していますか。
もちろん。もう1つ理由があるとすれば、ブランドの全てについて意思決定ができるという点。前職のマイケル・コースではハンドバッグ部門というワンカテゴリーのトップでしたが、ケイト・スペードではレディ・トゥ・ウェアからアクセサリー、ストアデザイン、ブランドを表現するビジュアルなど、全てについて私がデザイン決定を担当します。
就任にあたり、まず初めに行ったことは何ですか。
”原点”に戻るということ。私自身がケイトとアンディにインスパイアされたという経験を持っているので、彼らが最初にどんな想いをこのブランドに込めたんだろうということを大事にしたいと考えました。彼らはブランドのジョイフルなムードを通じて、女性がファッションで自己表現することを称賛してきたように思うのです。そこで、彼らの「イミテーションではなく自分のパーソナルスタイルを持っていいんだよ」というメッセージを受け継ぎ、それをいかに今の時代に合った形でモダンに表現していくか、ということに挑戦することにしました。
その想いが、新しいケイト・スペードのコンセプト「オプティミスティックフェミニニティ(optimistic femininity)=楽観的な女性らしさ」にも反映されているのでしょうか。
はい。オプティミスティックフェミニニティは、自分に自信があって、明るく楽観的な思考を持っていて、だけど地に足がついていて…というモダンな女性像を意味しています。これは私が思う理想的な女性像でもあるのですが、こういったスタイルを称賛するようなブランドを創り上げていきたい。デビューコレクションでも、この想いを表現しています。
デビューコレクションは、具体的にどのように作り上げていったのですか。
ブランドの持つカラーの魅力を進化させること、プリントを進化させること、ブランドを表現するコアエレメントを作ること、この3つに取り組みました。
カラーはどのように進化させたのですか。
ケイト・スペードはもともと赤なら赤、ピンクならピンクと原色をパキッと使うというアプローチを取っていたと思いますが、私はそこに繊細なニュアンスを加えたいと思いました。例えばワンピースには、ビビッドな黄色ではなく、パステルイエローのようなシャルトルーズカラーを採用しました。新鮮な”発見”のあるカラーコンビネーションにもこだわっていて、良い例が、チェック柄のブラウスやワンピースに起用したライラック×シャルトルーズ、グリーン×ピンクです。今まで見たことが無い、斬新なコンビネーションを提案しました。
華やかなプリントも印象的でしたね。
プリントについていえば、ブランドを代表するようなシグネチャープリントを作ってあげることが大事だと考えていました。例えば、4つのスペードを組み合わせたスペードフラワー。フラワープリントは今までのケイト・スペードにとっても欠かせないものでしたが、そこに新しい解釈を加え、花の表現をリアルからグラフィカルへとリフレッシュすることにしました。スペードフラワーは新生ケイト・スペードで、長きに渡って起用していきたいデザインの1つですね。