スペードはその他にも多くのアイテムに起用されていました。シンボリックなモチーフを取り入れた意図は?
誰もが一目見て”ケイト・スペードだ”と分かるようなアイコンが必要だと考えました。これまで支持されてきたカラーやプリントをリフレッシュさせるという取り組みのほかにも、ブランドのコアになるアイコンを創ることが必要だと。そんな時、意外にも、このブランドがスペードをロゴ以外で使用したことが無かったと知り、ぜひ取り入れたいと思いました。しかし、スペードはともすれば子供っぽくなってしまう。いかに上質に表現するかということに試行錯誤しました。
具体的にはアイテムにどのような工夫を施したのでしょうか。
バッグを例に取ると、スペード型のクロージャ―に複雑な構造のカッティングを取り入れることで、上質なパーツに仕上げています。バイカラーを採用したのはパーソナルな理由もあって、私にはドクターをしている双子の姉がいて、2色が1つになっているというのが2人で1人のような気がして好きなんです。スペードは逆さにするとハートになるところが、私の一番気に入っているポイントで、それも取り入れています。くるりと回すとハートになる、という小さな”発見”を込めています。
”発見”がキーワードなのですね。
”発見”のあるアイテムは他にもたくさん用意していて、たとえばこのレザーのカゴバッグは、一目ではスペードがあるなんて思わないでしょう。でもよく見ると、全ての編み込みがスペードになっている。先ほど話したスペードフラワーも、遠くからだとお花に見えるけど、近くで見るとスペードかも?という”発見”を込めました。
実はシューズの底にもスペードが隠されていて、歩いた後にできる足跡がスペードになっている!というさりげない遊び心を込めているのです。
ジュエリーは、どこにこだわりましたか?
とにかく重ね付けできることを意識しました。シーズンの中で、どれを組み合わせても成り立つようにしています。お気に入りは、ターンロックになっているブレスレット。好き、嫌い、という花占いにインスピレーションを受けたリングや、スイーツに着想を得たネックレスも気に入っています。
ストアデザインはどのように変えていく予定ですか。
私はアートや建築にインスパイアされることが多いのですが、ストアデザインにも、ベルギーの美術館にあるポップなアートピースをイメージした壁を取り入れたり、曲線的な建築から着想を得たカービィーな什器を設置する構想があります。ストアの大々的なリニューアルは銀座店が世界でも最初の候補に挙がっていて、2019年秋を目標にしているので、楽しみにしていてください。
ビジュアル面のこだわりは?
これは本当にエキサイティングなニュースなんですが、ビジュアルの撮影のために、ケイトとアンディが長く使ってきたティム・ウォーカーというイギリスのカメラマンを、もう一度起用します。ケイトとアンディがブランドを離れて以来15年ぶりです。彼の創り出す女性像が、私が思い描くケイトスペードウーマンとマッチしているのです。
ティム・ウォーカー作品のどんなところに魅力を感じたのですか。
写っている女性が生きることを楽しんでいるような、ポジティブなスピリットが感じられるところが魅力です。彼の作品は2、3人の女性がどことなく親密で、ちょっとシュルレアリスム的に写されている作品が多いんです。たとえば体に対して不釣り合いな大きな帽子をかぶっていたり、道路の白線とワンピースの線がくっついていたり、「えっ」って2度見してしまうような遊び心があって。ケイトとアンディも、きっとそんなところに魅了されたのだと思います。
ここでも原点に返ることを意識したのですね。
はい。ただ、原点に返りつつも、新しいことにトライすることも忘れません。モデルにはファッションアイコンとしてブレイクしそうなアメリカの若手女優の3人、ジュリア・ガーナー、サディ・シンク、キキ・レーンを起用しています。