リック・オウエンス(Rick Owens)は、2019-20年秋冬メンズコレクションを、2019年1月17日(木)に、フランス・パリのパレ・ド・トーキョーにて発表した。
コンクリートの壁に囲まれた、退廃的なムードが充満する会場内。不意に暗転すると、大きなレーザーライトがゆっくりと動き出し、無機質な光線でランウェイが照らし出された。インスピレーション源は、1970年代のグラムディスコ時代に活躍し、KISSの衣装などを手掛けたニューヨークのデザイナー、Larry Legapsi。グラマラスでアイキャッチなLarry Legapsiの世界観を、リック オウエンスのフィルターにかけて表現した。
ブラック、ベージュ、レッドに彩られたキルティングベストやコートは、軽くしなやかに身体を包み込む。縦長の優雅なシルエットが見せるのは、シンプルな美しさ。レッドのコートの打ち合わせには、グラデーションのライナーがスナップで固定されている。組み合わせたワイドパンツには鮮やかな染めが施されており、色彩の織り成すアーティスティックな雰囲気が感じられる。
目を引くのは、アシンメトリーなフォルムのダウンジャケット。袖と身頃がホワイトとブラックで切り替えられており、右肩には身体のラインに反する立体的な装飾が施されている。スカルプチャーのような造形と、滲んだような色の移り変わりが芸術的だ。スウェードをパッチワークしたパンツ、ハードなボリュームのヒールブーツを組み合わせることで、人工的なクラフト感を感じさせる。その他、カットソーの首周りのパーツをポケットにあしらったジャケットやなども登場した。
パワーショルダーやオーバーシルエットも散見されたポイント。コンパクトな襟のチェスターコートは、素材のほのかな光沢感が上品な落ち着きを感じさせるも、突き出すようにオーバーに仕立てられた肩の部分がソリッドな印象を演出する。また、ロング丈のダウンコート、ファーコートにもパワーショルダーが採用された。
レザー素材のバッグをポケットとしてあしらった、ウール地やシアリングのオーバーサイズコートは、構築的なデザインが特徴的。相反するようだが、ダイナミックなミニマリズムを見せる。また、コンパクトな丈のシアリングブルゾンは、袖の半分がダウンのキルティング仕様に。異なる素材を使っているからこそ生まれる独特の造形は、ミステリアスな余韻を残していく。