エトセンス(ETHOSENS)は、2019-20年秋冬コレクションを発表した。

流されることなく、フラットに

今季のクリエーションにあたり意識したのは「フラットトーン」。情報速度が速く、起伏の激しい時代において、ファッションの流れもまた同じく目まぐるしい変遷を辿っている。そのような時代の中で、デザイナーの橋本唯は激流の中にあっても、作り手として確固とした自らの立ち位置を築くことに重きを置いた。流されることなく、フラットな状態をキープしていく、という自らのスタンスが、コレクションに投影されている。

コレクションルックには、女性モデルを起用。基本的にはメンズウェアとして展開しているが、ジェンダーの垣根をフラットにする、という意図が込められている。

レイヤードの仕掛け、多層的なパターン

特徴的なのは、レイヤードしているかのように見えるコートやブラウス。ダブルフェイスのメルトンで仕立てたショールカラーのコートは、ボタンを外すと襟から肩にかけてのパーツがマフラーのようになり、首に巻いて着用することができる。フレキシブルなフォルムに、表面と裏面で異なる色が相まって、複雑でミステリアスな印象を放つ。

その他にも、身頃に生地を重ね、2WAYで着ることのできるブラウスや、襟の部分にフラップを重ね、前を留めて風を避けるようにも着られるウールのガウンコート等、パターンメイキングによる仕掛けを施し、構築的に仕立てたウェアが散見された。

結んで着る

また、“紐で結ぶ”仕様もポイント。バーガンディのテーラードジャケットは、襟や肩の仕立てはベーシックなテーラリングと変わらないが、合わせの部分に紐を施すことで、和装のような雰囲気に。ポケットも、流れるように緩やかな服地に沿って取り付けられている。分量感のあるワイドスラックスにはウエストにドローコードを、エンボス加工のハイウエストパンツには長めの紐をあしらい、紐を引いたり結んだりすることでベルトのようにウエストを固定することができるようになっている。

自然な色と色

色彩は、前シーズンと同じく、日本に古くから存在する自然の色彩を抽出。橙、茶色、バーガンディ、ボルドーなどのスモーキーな茶系統の色味と、深みのある青緑をはじめとする青系統に大きく二分できる。コーデュロイのセットアップとブラウスで色の濃淡を見せるスタイリングや、黒と茶色の2色で全身を統一したバイカラーのコーディネートなど、服と服が織り成すグラデーション、もしくはコントラストは、ごく自然で必然的な表象として表れているかのようだ。